68 / 137

第68話 強くなる絆

「陽馬……」  律が狼狽えたように名前を呼んでくる。  僕はその大好きな人の唇に自分の唇を押し当てた。  僕の方から律の唇を奪うのは初めてのことかもしれない。  律に強請られてすることはあったけど、こんなふうに積極的にキスをするのは初めて……。  奥手な僕にとっては凄いハードルが高い行動だったが、重ねた唇からこの狂おしい思いが伝わって欲しいと願ったから。 「律……好き……ん……」  僕に主導権を握られていた律が、僕の体をグイッと引き寄せ、キスを深くする。 「陽……馬……」  律が僕の口内に舌を差し入れて来て、好きなように蹂躙していく。  ……ほら、律はいつも僕のことをこんなふうに一瞬にして支配してしまう。  愛する人のキスのテクに溺れて、僕は我を忘れていく。  頭が痺れるような快感とともに下着の中で勃ち上がった僕の性器が欲を吐き出した。 「あ……あ……はあ……」  ゆるゆると現実感が戻って来る。  じんわりと濡れている下着。恥ずかしくてたまらないというのに、律はついさっきまでの憂い顔から一転艶やかに微笑む。 「キスだけでイケちゃう淫らな体……可愛いね、陽馬」 「……っ、だ、誰の所為だと!?」 「うん。俺の所為だよね」 「……う……」  そんなにはっきりと認められると恥ずかしい。  でも、気持ちを分かってほしくて、僕からしたキスは、二人の間に停滞していた剣呑な空気を払拭してくれたみたいで。 「ありがとう、陽馬。ごめんな……」  律はそう言うと僕の体を強く抱きしめ、言葉を続ける。 「……仲直りのキス、していい?」 「……律……」  そっと落とされるキス。  かたくなに強張っていた心が溶けていく。  律は僕を抱きしめたまますぐ背後にあるベッドへ倒れこんだ。 「あ……だめ、だよ。律、もうすぐ晩ご飯……」 「分かってる……今はこうして陽馬とくっついていたいだけ……おまえが確かに俺の腕の中にいるって感じていたいだけ」  律はそう言って僕の髪を優しく撫でてくれる。 「律……」  こうしてぴったりくっついていると、トクトクトクと律の規則正しい胸の鼓動が聞こえて来る。  結局、今回の合コン騒ぎは僕と律の絆をより深くしてくれる結果となった。

ともだちにシェアしよう!