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第69話 文化祭への誘い

「あ、そうだ。陽馬、これ」  うっとりと律の心音を感じていると、律がおもむろに一枚の紙を制服のポケットから出してきた。 「何?」  その紙は何かのチケットのようだった。  僕が詳しく見ようとする前に律が言った。 「今度うちの高校で文化祭があるだろ。それの入場チケット」 「えっ!? あの幻の?」  僕が驚くと、律は苦笑する。 「幻って……大袈裟な、単なる文化祭のチケットじゃん」 「でも……」  僕はまじまじとそのチケットを見つめた。  普通文化祭と言えば十一月に行われるのだが、律の高校は超進学校のため、三年生の受験の妨げになると、一足早く初夏の頃に催される。  G高校は人気校でその文化祭に行きたがる人はかなり多く、入場チケットがなければ参加できない。加えて律が入学してからは彼の人気も加わり、裏で金銭取引まで行われている程らしい。 「うわー、なんかアイドルのチケットに当選したみたい」 「何言ってんだか」 「ねー、律のクラスは何をするの?」 「喫茶店」 「……もしかして、律、ウエイターするとか?」 「え? ああ。よく分かったな。俺は面倒だから嫌だって言ったんだけど」  苦笑する律に、さっきまでのモヤモヤが再燃するのを感じた。 「……なんか、コスプレするの?」 「コスプレっていうのかなー? 女子がなんか衣装作ってるみたいだけど」  なんかやだなと心の狭い僕は思ってしまう。  きっと律のクラスの喫茶店は律目当ての女の子で大盛況だろう。  そんなのを目の当たりにしちゃったらまた僕の嫉妬心が燃え上がってしまいそう。  そりゃ僕も律のウエイター姿見たいけどさ。  僕が唇を尖らせながら考えていると、律が薄茶色の瞳でのぞき込んで来た。 「来てくれるだろ? 陽馬」 「……ん……」  やっぱり行きたい気持ちが勝った僕がうなずくと律は嬉しそうに微笑み、僕の額にキスをくれた。

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