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第137話 結婚式

 学に手を引かれてヴァージンロードを律の方へ向かって歩く。  ステンドグラスから差し込む陽に照らされた律はこの世のものではないみたいに綺麗だ。  観客は少ないけれども、それが緊張を軽減してくれることはなくて。  律の友人が誓いの言葉を読み上げ、僕と律がそれに応える。  そして、誓いのキス。  指輪の交換。  ベールをめくるときの律の手が少し震えていて、ああ、律も緊張してるんだ……ってすごく感動した。  教会の外に出て紙吹雪の祝福を受ける。  学の彼女にブーケを投げて欲しいと言われていたのを思い出し投げようとしたが、緊張していた所為か明後日の方向へと飛んで行ってしまった。  そしてブーケが着地したところは、 「……母さん!?」  絶対来てはもらえないと思っていた人たちのうちの一人だった。 「来てくれたんだ、母さん」 「ありがとう……母さん」  僕の隣で律が深々と頭を下げる。 「……そりゃあね、あんな招待状なんかもらったら気にならないわけないじゃない。父さんは最後まで行く必要ないって言ってたけど……あれはやせ我慢ね。我が子の結婚式を一目見たいのは親として当然の感情よ、許すか許さないかは別としてね。……それはそうと陽馬、あなた、いつ私の息子じゃなく娘になったの? その姿」  母さんは嘆かわしいとばかりに天を仰いだが、僕は嫌な気持ちにはならなかった。隣に立つ律も同じだろう。  だって母さんが来てくれたって言う事実だけでもう充分だったから。  父さんの姿はなかったけど、ほんのちょっぴりだけど雪解けの気配が見えて来たような気がするから……なんて、僕の都合いい考えかもしれないけど。  多分複雑な心境であろう母さんをはじめとする観客たちに見守られて僕と律は今日、夫婦となった。  喜びも悲しみも共にして、一生手を繋いで歩いて行く。  臆病な僕だけど、律が傍にいてくれるのなら強くなれる、きっと。  恋人だった昨日までと何ら変わらない関係のようで確かに何かが変わった二人の関係。  律が僕にしか聞こえない声で囁く。 「俺、すごい幸せだよ、陽馬」 「僕も律」  より深くなった絆を祝福するように律が僕のために作ってくれたウエディングドレスに優しい陽の光が注いでいた。                                     了    

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