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「そうか、怖かったな。もっと早くに来てあげるべきだった」 「怖い?はは。スザクさん、俺は暗殺者だよ?怖いなんて感情とっくに忘れて…ぅわっ」 突然、スザクがユキトを抱きしめた。 ふわりという抱きしめ方ではなく、強い力で。 スザクの温かい手がむき出しの背中に触れた。 「ス、スザクさん?どうしたの?」 突然の事にユキトは動揺する。 「どうしたんだろうな。抱きしめたかったんだ」 ふっとスザクが笑う。 「…スザクさんが笑うの初めて見た気がする」 「そうか?あぁ、そうかもな。ポーカーフェイスとよく言われるよ」 スザクとユキトは向き合った。 互いの目が互いの目を映した。 「あぁ、やはり綺麗な目をしている。」 スザクが小さく言った。 「ユキト、君は強い子だ。だが、ふと目を離すと消えてしまいそうな儚さも同時に持っている。その美しい目に、私はどう映っているのだろうね」 スザクが言う。 そして、ユキトが何かを言う前にそっとキスをした。 チュッという軽いキス。 「す、す、スザクさん…っ!?今のは…?」 驚いたユキトは、いつもの冷静さを失うくらい動揺して聞いた。 「すまん。つい、してしまった」 「ついって…」 ―今のって俺のファーストキスになるんじゃ… 「嫌だったか?」 スザクが聞いた。 「…いやじゃ、なぃけど…」 ユキトは聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。

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