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後日。
カランと音を立てて、ユキトはバーの扉が開けた。
やはりいつものカウンター席にスザクはいた。
ユキトは近付き話しかける。
「証拠、入手したよ」
テープレコーダーを取り出して言った。
ユキトは、奴が洗いざらい話をした後、奴を気絶させ、その隙に服を着替えて、屋敷を出たのだった。
「お疲れ様。流石だな。早速聞かせてもらってもいいか?」
「あ、この位置から聞いてほしい」
ユキトは少し慌ててボイスレコーダーの再生位置を調整してから、スザクにイヤホンを渡して聞かせた。
内容を確認し、スザクが言った。
「完璧だ。これで言質が取れた」
「この間の汚名は返上したかな」
「ユキト、前にも言ったが、この間の事は私のミスだから、気にしなくていいんだ。君は責任感が強過ぎる。私は本当は君が心配だ」
「スザクさん、子供扱いはやめてくれよ。俺はちゃんとした暗殺者だよ?」
ユキトは、少し膨れた顔をして不満そうにスザクに言った。
「ユキト、私の想いがイマイチ伝わっていないようだな。君が優秀な暗殺者であることはわかっているさ」
スザクは、ユキトの頭を撫でた。
突然のことにユキトは固まる。
この間のキスのことがまた頭をよぎってしまう。
「今回の男娼の真似事にしても本当は私は非常に不本意だった。だが、上層部からの命令には従わなければならない。ターゲットがユキトを指名したときは正直かなり葛藤したよ」
「なんで?俺には務まらないと思ったのか?」
「そうじゃない。ユキト、あの男に何をされた?情報を聞き出す代わりに、恥ずかしい事をされたんじゃないのか?」
ユキトはピクッ体を震わせたが、すぐに否定する。
「…されてないよ。スザクさんが気にする事じゃない」
するとスザクはユキトの両肩を少し強めに掴む。
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