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【3】裏の顔はオカン系男子!?……⑤

「小さな傷だからといって甘く見てはいけない。ピヨ……入中、とにかくあそこの公園まで行こう。絆創膏はある」 「……はあ」  周防の申し出を断れず、並んで公園まで歩いた。  公園の入口を抜け、噴水の傍にあるベンチに座る。すると周防が目の前で従者のように品よく傅いた。  足を取られ、革靴を脱がされる。そのまま果物の皮を剥くように靴下をつるりと脱がされ、踵をじっくり検品された。 「可哀相に……出血している。痛かっただろう?」 「あの……ホントに大丈夫ですから」  自分でやると言う前に変な軟膏を塗られ、その上から絆創膏をペタリと貼られた。不思議なもので、その瞬間、痛みが消えた。ホッとするような温かい気持ちに満たされる。これぞ手当てだなと思った。 「あの、ありがとうございます」 「構わない。これで普通に歩けるだろう」  二人の間を柔らかい夜風が吹き抜ける。周防の前髪がサラリと揺れた。 「なんか……お母さんみたい、ですよね?」 「どうした?」 「周防さんって見た目と違って、お母さんみが強いなって。行動とか言動が。……あ、失礼なことを言ってしまってすみません」  見た目と中身にギャップがあるオカン系彼氏やゴリラ系彼氏は確かに人気があるが、周防はその中でも異端な気がした。 「やはり、変か? 変なのか?」 「変というか……ギャップのアールが強めというか……」 「ギャップのアール……」 「あ、悪口じゃないですから。気にしないで下さい」 「俺は時々、人から変わっていると言われることがあるが、そんなに変か? 自分では至って普通の男、真面目でスタンダードなコンサルタントだと思っているが」  スタンダード?  周防が標準なら自分などゴミ屑だ。くそ虫だ。 「周防さんは素晴らしいコンサルタントです。尊敬していますし……非常におこがましいですが、自分もそうなれればと思っています。変というのは存在がユニークで型破りということです。唯一無二というか奇人というか……あれ」 「やはり、変わっているんだな?」 「いえ……あの……」 「いいんだ」 「すみません」  謝ってみたものの、真面目な顔をしている周防を見ていると笑いが込み上げてきそうになる。ニヤけるの抑えて冷静を装っていると周防が顔を近づけてきた。 「今、笑っているな?」 「いえ」 「いや、笑っている」  顔が近い。モアイというよりは石仏だ。なんかこう、悠久の時を超えました感がある。 「前頭筋と眼輪筋、胸筋と口輪筋が、微妙に動いているぞ」 「やめて下さい。ベテランの刑事(デカ)みたいです」  また例の尋問が始まったと思い、ついつい口元が緩んでしまう。 「その見た目でオカン系とか、ホントないです」 「ん? 何か言ったか?」 「いえ」  耐えきれず、とうとう陽向は吹き出した。 「周防さんはどうして俺なんかに優しくしてくれるんですか? 俺のこと、本当は、『ゆるふわ系のくそ虫が』って思ってるんじゃないんですか?」 「クソムシとはどんな虫だ。表現が独特だな」  おまえがな、と言いそうになる。  陽向はこれまで思っていたことを口にした。

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