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月明かり

ある都内のマンションの一室。月明かりが、二人の男を照らす。そのうちの一人である水園 澄(みその すみ)は乱れたベッドの上から硝子越しに夜空を見上げた。月を映すその瞳は透き通った海のようで、それに見惚れたもう一人の男の瞳に映るのはまるで迷子のような顔をした美しい男だった。 (あぁ、こいつの心はどこか穴が開いている) そう澄を見つめた霧島 政臣(きりしま かずおみ)は思った。そして、それを塞ぐのは自分ではないということを自覚したうえで澄の幸せを願う。 「月、綺麗だね」 夜空を見上げたまま、澄は偽りの愛の言葉を唱えた。 「ばーか。おまえ、そーいうのは本当に好きになったやつに言え。」 それを聞いた澄は政臣のほうを向いて、苦笑いし、 「そう、だね、、」 と、そんな人できるわけないと思いながら頷いた。そして、それをかき消すかのように煙草を銜え、先に煙草を吸っていた政臣からキスをするかのように火を貸りた。 二人分の煙が混ざり合い、その煙のように二人もまた混ざり合うのだった。

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