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第1話

A.M. 8:00_______晴れ_____________ 「ありがとう」 といった俺の額に口づけた政臣さんは 「ありがとうじゃなくて、行ってきますだろ。」 と返した。それに俺は苦笑いし、玄関の扉を開けて手を振った。 そうして政臣さんのマンションを出た俺は大学に向かった。俺の大学は政臣さんの家からあるいて15分の所にある。ちょうどいい距離だ。初夏の香りがする並木道を歩いていく。都内の喧騒の音と木々の揺れる音が混ざり合い、心地の良い音を奏でる。そんな音を聞いているうちに大学についた。大学に入ってから向かうのは大学内にあるカフェ――Ciel  フランス語で“空”という意味で、フランスで修業したオーナーが名付けた。名前の通り、空が見渡せるガラス張りの店内でお店の目の前には青々とした芝生が広がり、学生が思い思いのままに過ごすことが出来る。 「おはよう、澄君。」 ガラスのドアを開けると、仲のいい店員である――森谷 祥(もりたに しょう)に声をかけられた。森谷さんは俺よりも少し背が高く、こげ茶の髪色が見合う優しい顔の男性で、澄よりも四歳年上だ。そんな森谷さんに 「おはようございます。」 と声をかけたら、森谷さんはこっちこっちと手を振り僕を呼んだ。そして、耳元で 「来月の新作になる予定の試作食べる?」 とにやりとしながら囁いた。甘いものに目がないおれは、速攻で「はい!!」といい、いつも通りカフェラテを注文してから窓際の特等席に座った。  スマホをいじりながら注文したものが来るのを待っていると、 「すーみくん」 と呼ばれ、顔をあげると新作デザートの試作を持ってきた森谷さんがいた。その手には、輝かしいフルーツたちの中に堂々と鎮座するプリン様がいた。そう、それは“プリンアラモード”だ。トンっと音を立ててガラスのお皿に乗ったそれを森谷さんは微笑みながら目の前においてくれた。プリンが大好きな俺は目を輝かして、一口目を頂いた。口に入れた瞬間固めプリンの味わいが口の中に広がる。最高だ。そしてそのあと、一緒に持ってきてくれたカフェラテを飲む。うん。やっぱり最高。満足げな俺の顔を見て森谷さんもなんだか嬉しそうだった。 そんな、良い朝の時間を過ごしていると 「「「すみーーーーーーー!」」」 と言って手を振って近づいてくる三人組が現れた。 山本 遼(やまもと りょう)と神谷 香(かみたに かおる)、 そして―――――瀬戸 蓮(せと れん)。遼はサッカー部で少し日に焼けているが溌剌とした印象を受けるイケメンだ。香はこの四人のうちの唯一の女子でサバサバとした印象の黒髪美人。ちなみに、香は腐女子?というものらしい。最後に柔らかい色合いの茶色の髪が特徴的で、無駄に身長が高い俳優顔のイケメンが蓮だ。 「おはよう」 と微笑み、三人に返した。遼と香が「おはよー」と言い、椅子に腰かける中、蓮だけが俺にくっついてきた。正直うざったい。だが、それを無視し続けてプリンアラモードを食べきり、カフェラテを飲み切った。蓮以外の二人はモーニングプレートを食べ、遼はレモネードを、香はアイスコーヒーを飲み切った。  僕はいま、周りの人には恵まれているのかもしれない。だが、どこか欠けている自分がいる気がして、そっと蒼い空を見上げた。

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