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「確かに。うちのヘッドは、なぜか代々、女より男が好きなんだよな」 「とりあえず、報告しとくか」    一人がスマホを取り出し、もう一人は和希の肩を地面に押さえつけた。 「美形の兄ちゃん、ゲットだぜ」    欠けた歯を見せて笑っている。    まずい状況だということはわかるのに、身体が固まって言うことを聞かない。肩に触れる指の感触が気持ち悪くて、背筋に悪寒が走り抜けた。 (お願いだから、手をどけてくれ……)    激しい嫌悪感に、全身がガタガタ震えた。 「すげえ震えてるな」 「そりゃあ、もしかしたら、この後テルさんにヤられちゃうわけだしぃ?」  金髪の男がひひひと笑った。その時、すぐ近くでガサリと何かが動く音がした。 「誰だ」    男たちが周囲を見回す。 「誰かいるのか」    返事はなかった。けれど、再びガサリと音がして植え込みが揺れた。    チッ、と舌を鳴らした二人組は、音の正体を確かめる前に闇の中に逃げていった。    人の手の感触が去ると、和希はようやく息を吐いた。呼吸を整え、音のしたほうを見る。ツツジの下に白くて小さいものが座っていた。 (猫……)    和希が手を伸ばすと、子猫はシャアッと毛を逆立てて、痛烈な猫パンチを繰り出した。そのまま猛ダッシュでどこかに行ってしまう。 「いっ……っ」    手の甲に滲んだ血を舌で舐めながら、ついてないなと目を閉じた。    いいことは何もないのに、嫌なことばかり起こる。    ゲホッと一つ咳き込み身体を起こしたが、嘔吐感が込み上げてきて、再びうずくまった。    泣きたい気持ちで膝を抱えていた。    しばらくして、頭の上で声がした。 「おい。大丈夫か?」    視線を上げるとカサカサ揺れるコンビニ袋が目に入った。  顔も上げると、月を背にした背の高い男のシルエットがぼんやり見えた。

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