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【9】-2

 今のままで十分繁盛しているのだから構わないだろうと言って、岩田はいつもの席に行ってしまった。  女性に飲み物を出すと、慎一が和希の前に戻ってきた。天井に視線を向けて「みるく、どうしてるかな」と呟く。 「心配?」 「うん」  思わず笑ってしまった。ペットが留守番をするのは、たぶんそれほど珍しいことではない。そう和希が言っても、ひっそりと眉を寄せたままだ。 「あんなに小さいのに……」 「意外と過保護だよね」 「だって、昼間は俺にべったりなんだぞ」  氷とお冷の入ったグラスを和希に出しながら、「そう言えば、和希、引っ越し先どうした?」と聞く。 「決めた?」 「まだ」 「じゃあさ、うちに来る?」  あまりに軽く言われて、「はあ?」と盛大に首を傾げてしまった。 「急に、何を……」 「いいと思うんだよなぁ」  にこにこと頷いている顔を呆然と見ながら、ああ、と気が付いた。 「みるくのため?」 「あー……、みるくと俺と、和希のため?」 「みるくのためだな」 「いやいや。みんなのためだよ」  いいと思うんだよなぁと、グラスを磨きながら慎一は繰り返す。昼間は自分がいるし、夜は和希がいる。和希の職場にも通いやすいし、部屋もちょうど余っているしと。 「ねぇ、考えてみてよ」 「いくらなんでも、急すぎるよ。それに、みるくのために同居してくれる人なら、ほかにいるだろ」  問題を抱えた和希と違って、慎一の場合、恋人がいないほうが不思議だ。 「彼女さんとか」 「そんなのいない。それに、俺は和希がいいんだよ」 「なんで?」 「うーん。なんでだろう?」

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