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【15】-2

「慎一……」 『ん?』 「……明日は?」  本当は、すぐにでも慎一に会いたかった。なぜ、さっきは断ってしまったのだろうと、すでに後悔し始めていた。 『昼間、もう少しテルを探してみようと思う。公園から逃げて、すぐに隠れられそうな空き家が、近くにいくつかあるんだよ。直接行って見てくるつもり』 「慎一が、そこまでしないとダメなの?」 『堀さんには、ずいぶん世話になったからな。それに、堀さんは、自分が楽をしたくて言ったんじゃないんだよ。テルたちが年少送りにならないように、気をつけろって、釘を刺しに来たんだ。顔と言い方が怖いけど、あれで案外、優しい人なんだよ』  少年院送致と保護観察処分では、後の生きにくさが大きく変わってくる。自分も昔、助けてもらったのだと言った。 『夕方までには戻るし、いつも店が開くくらいの時間に来れば、何か作ってやるよ』  来るだろ? と優しく言われて「うん!」と全力で答えていた。尻尾があればブンブン振っていた自信がある。  じゃあな、と言って慎一は通話を切った。 「そっか……」  堀の意図を聞かされ、やはり、自分はまだまだわかっていないなと反省した。 (でも、明日の夕方には慎一に会える……)  急に元気が出た。 「片づけ、頑張ろう!」  クローゼットを開け、奥で埃をかぶっている箱を引っ張り出して、古い本の整理という未曽有の大事業に着手した。

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