54 / 74
【15】-2
「慎一……」
『ん?』
「……明日は?」
本当は、すぐにでも慎一に会いたかった。なぜ、さっきは断ってしまったのだろうと、すでに後悔し始めていた。
『昼間、もう少しテルを探してみようと思う。公園から逃げて、すぐに隠れられそうな空き家が、近くにいくつかあるんだよ。直接行って見てくるつもり』
「慎一が、そこまでしないとダメなの?」
『堀さんには、ずいぶん世話になったからな。それに、堀さんは、自分が楽をしたくて言ったんじゃないんだよ。テルたちが年少送りにならないように、気をつけろって、釘を刺しに来たんだ。顔と言い方が怖いけど、あれで案外、優しい人なんだよ』
少年院送致と保護観察処分では、後の生きにくさが大きく変わってくる。自分も昔、助けてもらったのだと言った。
『夕方までには戻るし、いつも店が開くくらいの時間に来れば、何か作ってやるよ』
来るだろ? と優しく言われて「うん!」と全力で答えていた。尻尾があればブンブン振っていた自信がある。
じゃあな、と言って慎一は通話を切った。
「そっか……」
堀の意図を聞かされ、やはり、自分はまだまだわかっていないなと反省した。
(でも、明日の夕方には慎一に会える……)
急に元気が出た。
「片づけ、頑張ろう!」
クローゼットを開け、奥で埃をかぶっている箱を引っ張り出して、古い本の整理という未曽有の大事業に着手した。
ともだちにシェアしよう!