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【16】-2
せっかく慎一のところで幸せになれたのに……。
「みるくー、どこー」
慎一は、どうしてみるくを探しにこないのだろう。
(あの人がいるから?)
何故、彼女はあそこにいたのだろう。夕方まで留守だったはずの慎一の家に……。
疑問は不安に変わり、頭の中をぐるぐる回り始めた。
「みるくー」
突き当りの工場まで来て門の奥を覗くと、暗がりの中に硝子の割れた建物がぼんやりと見えた。
門が少し開いていた。
「失礼します……。みるくー……」
カランと音を立てて、空き缶が転がった。
「……なんだよ、さっきから。みるくみるくって、うるせえな」
人がいるとは思わなかったので、和希は慌てた。
「す、すみません……。猫が……」
「猫? ……って、あ、いつかの兄ちゃんじゃん」
建物の影から金髪頭が現れた。前歯が一本欠けている。
「わざわざ来てくれたの? ちょうどいいや。テルさんに会わせてやるよ」
にゅっと手が伸びてきて、思わず跳ねのける。
「相変わらず、生意気だな。いいから来いよ」
力ずくで腕を取られ、ぞくりと背中に悪寒が走った。
「は、離せ……っ」
「うるせえ。おい、ヤス、テルさん呼んでこい!」
闇の奥に向かって金髪頭が声を張った。
「ああ? なんだよ、タカ」
「こないだの兄ちゃん捕まえた。べっぴんの」
「お? やったじゃん。すぐ呼んでくるわ」
奥から大柄な男が姿を現した。
「テルさん、こいつです」
タカがテルの前に和希を突き飛ばした。
「へえ……」
にやにや笑いながら、テルが手を伸ばしてきた。和希はそれも反射的に払いのけた。
「何だよ。えらく鼻っ柱が強ぇな」
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