ちょっと押さえておけと、テルが二人に命じた。タカに後ろ手に締め上げられ、恐怖で身体が硬直した。 「……は、はな、せ……」 　声が震える。テルが近づいてきて、和希の顎を掴んだ。 （嫌だ。さわらないでくれ……） 　ぎゅっと目をつぶった。歯がガチガチ音を立てた。 「確かに綺麗な兄ちゃんだな。えらい震えてっけど、さっきの威勢はどうした」 　顔と首をそろりと撫でられ、あまりの気持ち悪さに吐きそうになる。動けと自分の体に命じ、わずかに身をよじった。 　腕は少しも自由にならず、そのかわりに足がテルを蹴った。 「何すんだ、てめえっ」 　突然キレたテルが和希の襟を掴んだ。 「自分がどういう状況かわかってんのか？」 　涙が出そうになる。 「まあ、いい。ヤス、タカ。とりあえず財布だ。探せ」 　カッターシャツの胸やチノのポケットを探られ、身体中から冷汗が噴き出した。さわるな、離せと弱々しく繰り返すしかなかった。 　財布とスマホはエコバッグの中だ。どんなに探しても、ここにはない。 「兄ちゃん、泣いてんのか。ずいぶんと怯えちゃって、可愛いじゃん…。俺、こういうの、たまんねえんだよな。…勃ってきた。おいタカ、そいつの尻出して、こっち向けろや」 「ええ？　こんなとこでヤるんすか？」 「手間かけさせたバツだよ。このところ、むしゃくしゃしてたしな。お前らが見てる前で一発ぶち込んで、具合がよけりゃ、奥に連れてってゆっくり楽しませてもらうからよ」 　テルが何を言っているのか、すぐには理解できなかった。わかってしまうと身体中の血が一気に凍り付いた。