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【16】-4
ニッカポッカのベルトをカチャカチャと外し始めるテルに「好きっすね」と苦笑しながら、ヤスが和希を羽交い絞めにした。
震える和希の前にしゃがみ込んで、タカは「どれどれ」と笑いながらチノのベルトに手をかけた。
嫌悪感で気を失いそうになりながら、和希は懸命に身体を動かそうとした。
ローファーの踵を上げて、ヤスのつま先を力任せに踏みつける。
「ギャッ」
腕の拘束が緩んだ。
タカの頭を膝で蹴って、ガクガク震える足をもつれさせながら、門のほうに駆けだした。
「おい、こら! 待てっ」
「逃げられると思ってんのかよ」
門を出たところで、ヤスとタカに捕まった。
「さ、さわらないで、くれ……!」
声も身体も情けないほど震えている。う、と嗚咽が漏れたところで、路地の向こうから人が走ってくるのが見えた。
「和希!」
「し、慎一……っ!」
二人の男から逃れようと、泣きながらもがいてる和希を見て、慎一の形相が変わった。
「おまえら……っ」
「なんだ、てめえ……」
肩を怒らせて一歩前に出たタカが、一瞬で路地に倒れた。
驚いたヤスが和希から手を離した隙に、慎一が和希を引きよせ、自分の背後に押しやった。
「こ、この前の……。堀さんの……」
公園で和希をを襲った二人だと、しどろもどろに伝えた。テルも奥にいると。
「テル!」
ドスのきいた声で、慎一が暗がりに向かって怒鳴った。
誰だよ、と身体を揺らしながら出てきたテルは、慎一の姿を見たとたん、ビクッと震えて後ずさった。
「し、シンさん……」
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