60 / 74

【17】-2

「あったよ。帰ってきて、和希を待ってたらピンポンが鳴って、出たら、あれがいた」 「……それだけ?」 「それだけだ」 「何しに来たの?」 「知るかよ」  高そうな酒の箱を見せて、受け取れと言うから断っていたところだったと言った。 「……ふ、ふうん」  二、三歩先に行っていた慎一が、戻ってきて和希を見下ろした。ビミョーな沈黙が流れる。  薄闇に包まれた路地裏で、何もない塀に向かって和希は視線を泳がせた。  慎一がにやにやと笑い始めた。 「和希……、妬いたんだ」 「ち、違……」 「違わないだろ。素直になれよ」  慎一の機嫌はすっかりよくなっている。 「俺が彼女といるのを見て、動揺したんだな」 「違う! みるくが……」  みるくが逃げて、慌てたのだ。それは本当だ。 「みるく、外に出たことないのに、帰れなくなったら可哀そうじゃないか」 「うんうん。みるくのことも、もちろん心配だったよな。でも、動揺もしたんだ」  全く譲らない男の胸をドンと叩いた。そのまま抱き寄せられて、髪にキスを落とされる。 「あー、どうしてくれよう。もう待ってやれない気がする。今すぐ、どうにかしたい」  ぎゅうぎゅうと腕に力をこめられ、「苦しい」、「バカ」と訴えたが、しばらく緩めてもらえなかった。

ともだちにシェアしよう!