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第21話 いい

「いいでしょ」 「いい」  武市の新居に吉野は来ていた。  卒業した日に引っ越した。引っ越しのために母親に書類をお願いすることがあったので、約束をなんとか取り付けて、お金を盗ったことを謝ってバイト代でお金をかえしたけど、母親は許してくれることもなく、家を出ていく自分を裏切ったと罵った。  もう仕方ない。自分は自分の足で生きていく。たぶん、自分は確かにどこかで母親を裏切ったのだろうけど、自分も母親に裏切られていた。だから、もう終わりだ。  卒業式が終わってすぐに吉野が車を借りてきて、武市の荷物をもって行った。まだ何もない部屋で二人きりになる。 「おめでとう」 「ありがとう」  なぜだか涙が出そうになる。 「ちゃんとしようって、吉野さんのおかげで思えるようなった。吉野さんのことが好き。改めて付き合ってほしい」 「もう、つきあってるでしょ? 俺も好きだよ」  お互いの顔を見合ってゆっくりと顔を寄せてキスをした。口でのキスは最初の時以来で照れくさい。  まだ家具という家具はないけど、ベッドだけあって、そこに誘われるように座らせられた。 「いい?」  吉野に返事をする前に口をふさがれる。今度は大きな口で唇を吸われて、舌が入ってきた。ぐるりと口の中をなめられて味わうように舌を舌で撫でられる。 唇を離した時には吉野はオスの顔で、そのまま頬を噛まれる。 「すごい待ってた。できる?」  顔中にキスを降らされて、露骨なしたいという態度に自分の体が熱くなる。 「でき、るというか、したい。俺こそまってたから」  顔から火が出るぐらい恥ずかしくて、それでもなんとかしぼりだして言葉をつづった。待ってた。吉野は卒業までしないと言うからには絶対にしないだろうと思ってたから、心待ちにして男同士のやり方も調べてみたりした。 「いいね。すごいかわいい」  武市はそのままベッドに押し倒されて、あっという間に上半身の服を脱がされ、パンツだけになる。  ふつうの男の体を見せているだけなのに恥ずかしい。  パンツにも手をかけられて、それを脱がされるのがたまらなくはずかしくて、それに吉野も気付いたのか、脱ぐ前に上から触られた。 「あっ」 こえが漏れ出れる。 「触られるの初めて?」 「わるい?」  ヤンキー然としているのに、初めてだと知られるのが照れくさくて妙につっかっかった口調になった。 「えっ、めっちゃいい」 吉野はすぐに返事した。らんらんとした目が少し怖い。 「別に遊んでても、全然いいけどさ。ちょっと嬉しい」  そういいながら吉野のパンツ越しに触る手つきが豪快になる。大きな手は柔らかくそこを揉みしだいた。自分でさっさとすませてしまうときとは次元が違う。優しく時には大胆で気持ちよくてうなるような声が出てしまう。 「気持ちい? ぬがしていい?」 先っぽをくりくりとなぞるようにされて、直に触れてほしくてたまらない。 「吉野さんも脱いで」 「了解」  吉野は手ばやくどんどんと脱いでいく。あらわになっていく肌色が自分とかわらない形をしているのに、興奮する。  裸になった吉野は武市にまたキスをした裸の肌同士がいろんなところであわさってそのしっとりとした熱が自分と吉野をいきかってる。 「裸見たら引くかと思ってたけどいけそうだね」  唇を離して吉野の膝で武市のものをすり上げられた。それだけで背中の神系が張りつめるぐらい気持ちいい。自分の先から粘液がこぼれ出ているのを自覚する。ボクサーパンツの布地を発情が持ち上げている。 「脱がせていい?」 「いい!」  もうじかに触ってほしくて待ちきれなくてなんどもうなずいた。  むきだしになったそこは完全に立ち上がっていた。吉野はなんのためらいもなくそれをもってしごく。身体の官能が全部呼び覚まされてそこにいって寄せてばかりいる。 「気持ちよさそうだね。よかった。もっと気持ちいのほしくない?」  いまでも十分気持ちがいいからこれ以上ってなにって思う前に吉野の体が武市の下腹にかがんで口が大きく開く。 「ちょっ、まって」 武市の静止を聞かずに吉野はそれを口に含んだ。 「ああっ」  吉野の口は巧みで、気持ちよさに腰が思わず引いて口から離れそうになる。それを許さないと言うみたいに、抜け出た場所を巧みに手がいじって刺激する。 「もうむり、出る、やばい、あっ」  自分で出るっていうとそれが実感となって、このままだと吉野の口に出すだってわかってるのに、我慢できなくなって出してしまった。  吉野のはそれもわかっていたみたいに飲んで、最後の残滓を絞るように先を吸った。 「ん……」  吉野は顔を上げて唇をなめて笑った。あまりにも卑猥で頭から湯気が出そうだ。煮える頭はすぐに下半身に煮えた命令を出すものだから、出したばかりなのに、自分のものは頭を上げそうになってる。 「ごめん」  全部が恥ずかしくて顔を隠した。 「いいよ」  すっと吉野は立ち上がる。何だろうと思うと自分のカバンからローションとゴムを取り出した。 「やる気まんまんだろ? 俺の方が恥ずかしくない?」  少しだけ照れたかんじで吉野が笑った。それがかわいい。自分の頭がゆだったまま帰らない。 「ローションとかさわったことある?」  吉野はベッドに武市をふたたび押し倒すと、乳首に垂らした。冷たい感覚が自分の肌をたれていく感触がむず痒い。 「ここも気持ちよくしようね」  ぬちゃりとひわいな音をさせて乳首を指がこねる。そんなとこ普通の皮膚と変わらないと思っていたのに、執拗に触られると、血が巡っていくのがわかる。先の小さな器官にまで血がめぐる。ぬるっとした感覚がさらにそこが卑猥な場所だと教え込まれるみたいだ。 「ふっ、つ」  口から息が漏れていく。はれて存在を主張するような乳首ができたころには下も完全に立ち上がって濡れていた。 「まだ大丈夫?」  吉野がローションを再び手に取った。なにをされるか、自分でも調べていたのでわかる。エロいことはしたくても少しその行為にいぶかしいものはあったけど、今はもっともっと触られたくて、武市はうなづいた。 「お利巧」  吉野は粘液を自らの手に出した。人肌に温まるとそれを武市の後ろのその場所に垂らす。ゆっくりとほぐすように滑らせると、指を一本滑り込ませる。 「うあ、」 「きもちわるかったら言ってな。すぐやめるから」  そう吉野は言うが、数か月、横に寝るだけで待たせて、今日もやる気で来てくれたのに、ここでやめさせるのはかわいそうで、何より、自分もその数か月待っていて、つながりたいと思っていた。 「大丈夫だからつづけて」  指が増えていく間、吉野は利きてじゃない手も器用なようで、左手は性器をもてあそんだり胸や腹を撫でてみたりして、身体の熱さはひかなかった。 「ああ……」  ずっと気持ちいいまで体の感覚が緩んでいくのがわかる。自分の体がのびきったゴムみたいにだらりと力が抜ける。 「そろそろいけるかな?」  下に指が入ってるのに違和感がなくなった頃、吉野が武市の両足を持ち上げた。 「いれる?」  吉野の下腹部に目をやると吉野の性器は準備万端に膨れ上がっている。端正に作られた顔に準ずるのか反しているのか、立派と言える。 「や、そうしたいけど、もうちょっといじろうかな」  たれてくる汗をひじで拭うと、吉野はもう一度指を入れた。今度はなにか意思をもった動きをしている。ちょうど、頭をあげている性器の裏あたりをさすられた。 「えッ、あっ」 最初になぞられた時はへんだとしか、思えないような感覚だったのに、何度もそこを指が行きかいすると、どんどんと快感という色が自分の臀部から全身を染めていく。 「あっ、ん……やめ」  自分で自分のよくわからない性感に連れられて行って思わず、否定の言葉を行ってしまう。 「ちが、」  すぐにその言葉を否定して慌てて吉野の目とかち合う。いつも優し気な吉野の目は欲に濡れていて、普段がグレーなら今は真っ赤だった。 「違う?」 「違う。もっと、吉野さんの好きなようにして」 「ありがと、連が気持ちいいことが俺の好きなことだよ」体全体が欲にまみれていても吉野は優しくて武市の額にキスをした。「って思ってるけど、爆発しそう。本当に、ダメそうなら俺を思って止めないなんてことしないでね」 「わかった」 たぶん止めないと思うけど、それでもうなづくともう一度、キスされた。  吉野は枕を武市の腰の下に敷いて、自分のものにゴムを着けてローションをその上にかけた。とても準備して丁寧に扱われてるのがわかって、嬉しい。  後ろに吉野の先端をあてがわれる。今から入れるというときに目線が自分の顔にきて、目が合って少し笑いあった。  ぐっと入ってきたそれは指よりも重さを感じてより蹂躙されている感じがした。おし進められるとそんなところにも自分の神経が通っているのかとびっくりする。ずるりと壁をこすられていく感覚に腰がつよくわなないて持ち上がった。  喘ぎ声と一緒に後ろの淵が吉野のものを締め付けている。 「やあ、あっ、あっ」  奥まで入り込んできたそれに体中が満ちたりた感じがした。体が吉野の性器を締め付けて吉野のものが脈うっているのがわかる。肌と肌の秘匿された最上級のところで触れあっている。  ぎゅっと抱きしめられて口づけをした。自分の口からは喘ぎ声が出ていてキスをするのはしんどいのに、夢中で、吉野の口の中さえもむさぼった。 「いけそう? 動かすよ」  吉野が腰をひいては押した、それがさっき覚えさせられたところをかすって、目の裏がはじける。 「ああ、!」  抱きかかえながらここが良いところだと言うように何度もこすられて、そのたびに腰から全身に快感がはじける。 「ん、あっ……ん」  おもわずやだ、といいそうになって唇を噛んだ。かけめぐる快感がよすぎて、止めてほしい、でも本当にやめられたらこまる。  ずりずりと出ていっては入るそこで自分の中がもっともっとってしぼっている。きつい壁をすられるとひときわ気持ちいい。もうそこは完全に欲望を満たすことを覚えてしまって、入れられるタイミングでしめると吉野がうめいた。 「えっろい中身してんね?」 「吉野さんも、気持ちいい?」 「すっげぇ、いい」  奥の方まで入って来たそれがゆするように動く、中をみっちり詰められるとたまらなく満ち足りる。 「もう俺ヤバいわ。もうちょっとがんばって」  吉野は武市の足をつかみなおしぐんと奥をつく。 「ああっ」  ぐっ、ぐっと内壁をこすられて喘ぎ声が止まらない。吉野の指が自分のものをしごきながら後ろも責め得られて、頭が馬鹿になるぐらい気持ちよくなる。 「あっ、ああぁ……もう、いく…っ」  自分の腰をひときわそらせて、射精した。はじけでるって感じで、自分のものが腹に垂れている。  武市が達するとその締め付けで吉野も達したようでどさりと吉野の上に落ちてきた。吉野が自分の精液で汚れると思ったけどどうでもいいぐらいに疲れた。どっしりと大人の男の体重が自分に寄っかかる。汗でしめった肌なんて気持ち悪いはずなのに、なんだか感動する。 「ああーー、気持ちよかった」 ずるりと性器を抜かれてびくりとからだが跳ねた。 「連も気持ちよかったみたいだね」 「聞くな」 ふふっと、笑う吉野をみるのが照れくさくて枕を投げた。 「俺もこっち引っ越そうかな」  ならんでカレーをつくった。二人で作ったからか、カレーはやっぱり間違いないのか、疲れているからか、料理があまりできない二人にしてはカレーはおいしいかった。 「俺は嬉しいけど」 この家は吉野さんの家からは離れてる。 「蓮があそこから離れるのは仕方ないと言うか離れるべきだと思うけど、というかうち来にくいだろ」 「まぁそうだね」  どのタイミングで言おうか悩んでいたけど。武市は吉野のに手を出すように言った。  素直に吉野は手を出す。 「これ、ここの合鍵、今まではいつも吉野さん家に押しかけてたけど、これからはうちに来てよ。画材もうちに好きなだけ持ち込んでいいからさ」  改めてちゃんと教えて貰った吉野が一番働いている職場の美術高校からはここは近い。今まで迷惑をかけて世話をかけた分、今度は自分が吉野の帰りたい場所にもなりたい。  そのためにベッド以外の家具は何も買ってなかった。 「今日卒業した分際で、かっこいいこというな」吉野は鍵を眺める。「そんなこと言うと入り浸るから。俺、寂しがり屋なんだよ」 「知ってます」 「連と会う前は自分の家招くのも、人の家を訪ねるのも苦手だったんだ。自分は人間と親密になれない生き物なんだと思ってた。前に蓮にベタみたいって言っただろ。あれ自分のことだったんだ。自分はベタできっと誰ともうまくいかないんだって。でも、蓮は俺にとってそばにいてくれても気にならない人間だった。俺を飼ってよ」 「何それ。いいよ、飼ってあげる」  自分の方が全然年下で飼われる方に違わないのに、にこりと笑う吉野がかっこよくて、かわいくて武市も自然に笑っていた。

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