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4騎士団兵舎とイケメン

 監禁され初めて他人にされた性器への手淫は、童貞のイオには刺激的すぎて呆気なく達し気絶した。  気が付いたら地下牢ではなく、普通の部屋のベッドに寝かされていた。鎖は外され、服は普通のシャツとズボンに変えられている。 「・・・・あれ?地下牢じゃない?」 「目が覚めたか。ここは騎士団の兵舎だ」 「!」  イオは顔だけ横を向けると、桶でタオルを絞っているヴェルジークと目が合った。イオは身体を起こそうとすると、背中を支えられベッドの縁に座り向かい合う。  明るい所で見ると、青い瞳は本物の宝石のようにさらにキラキラしていた。 「やっぱり宝石だよな・・・青い目」 「それはありがとう」  ヴェルジークはイオの手を取り、王子様のように手の甲に口付けた。そして舌で舐めた。  イオはびっくりしてすかさず手を引っ込める。 「うわっ!な、なんで舐める?!王子様みたいでカッコイイとか一瞬思ったのに、一気に変態に格下げだよ!?」 「フフフッ、君は面白いな」 「ヴェルジークさんって、変態?」 「どうだろうか。自分は正常だと思うけど、他人の評価は気にした事はないな」 「うーん、ある意味男前な発言」  ヴェルジークは容姿は男前の美丈夫だ。多分イオは自分が女の子だったら、即堕ちしていたかもしれないと思った。  考え込んでいると、腕をまた取られてタオルで拭かれる。 「かすり傷が少し残ったな・・・申し訳なかった。陛下の命令とはいえ、君に無理をさせた」 「あの・・・・・入れたんですか?」 「君の初めてがあのような粗末な地下牢では、私もさすがに寝覚めが悪い。そもそも最初から手を出すつもりはなかったからね」 「え、じゃあなんで?」  イオは紫の瞳で、ジッとヴェルジークを見つめる。ヴェルジークは青い目を、逸した。だが目線を追われてしまい、少したじろぐ。 「あの、なんで目を逸らすんですか」 「いや、なんというか・・・君に興味を持ったというか」 「興味?あぁ、魔剣とか使っちゃったからですか?」 「それもあるが、可愛い・・・なと思った」 「可愛い・・・うーん、可愛いなんて小さい頃親以外に言われた事ないんですけど」 「れっきとした成人男性である君を卑下しているわけではないんだ。純粋な私の気持ちだ」 「そうなんですか。でも、カッコイイ人に可愛いとか言われると嬉しいかな。ありがとうございます」  イオは笑顔を向けた。ヴェルジークもそれを見て、笑みを作って和らげる。 「氷の鉄壁ヴェルジーク副団長殿のその笑顔見たらご婦人方が卒倒すんぜ」  突然割って入って来た声に横を見上げると、ツーブロックの赤毛に茶色い瞳の爽やかそうなイケメンが立っていた。年齢は20代前半っぽい。 「フリエス、嫌味はよせ」 「褒めてるんだけど?それよりコイツが、ヴェルを吹っ飛ばした魔族?」 「人間です!」 「あぁ、そうなんだ?悪いな」  フリエスと名乗る赤毛のイケメンは、イオの髪を触ろうとするがヴェルジークに掴まれた。 「ん?なに、ヴェル?」 「いや、何でもない。彼は病み上がりだ、まだ接触するな」 「お前は触ってるのに?」 「俺は陛下よりイオを任されている。当然だ」 「あっー!職権乱用!副団長だからって偉そうに!」 「フリエス、やめろ」  フリエスという男はヴェルジークを、ヴェルと親しげに呼んでいる。ヴェルジークも、1人称が私から俺になっていた。  イオは仲の良さそうな2人に割って入る事が出来ずに困っていると、フリエスが話しかけてきた。 「ところで、イオ君って言うの?キリッとした猫目も可愛いね。俺は、騎士のフリエス=ゾラ。歳は22。君は何歳?」 「・・・・21歳です」 「おお、1個しか変わらないからイオって呼ばせてくれ。俺の事も、フリエスでいいよ。紫の瞳かぁ、セクシーだよねぇ。不吉の証とか言われてるけど、君の黒髪と似合ってるよ」 「・・・はぁ」  怒涛の爽やかナンパトークで、フリエスはチャラい人物だなとイオはちょっと引いた。 「ところで、俺はどう?ヴェルより高給取りじゃないけど。競争率はヴェルより低いし、忙しくて休みも取れないヴェルより君をデートに誘って楽しませてあげる自信はあるよ」 「なんの話ですか?」 「俺と付き合わない?」 「・・・んんん???」  多分口説かれているようだが、自分は男なので遊ばれているのだろうかとイオは考え込む。するとヴェルジークが、フリエスの顔にタオルを投げつけた。 「あぶっ」 「持ち場に戻れ、フリエス=ゾラ」 「部下へのこの仕打ち・・・。というか副団長を呼びに来たんですよ。団長が呼んでるんで」 「チェイン団長が?わかった、昼頃に伺うとま伝えてくれ」 「あ、それとイオも一緒に」 「・・・わかった。下がれ、フリエス」 「では失礼します、副団長。それと、イオ」  フリエスはイオに星が飛んできそうな爽やかウインクを投げつけると、お辞儀をして離れた。  頭に星が当たったような気がするイオは、イケメンなのに残念なイケメンだなと残念に思った。 「イオ」 「え、あ、なに?・・・あ、タメ口・・すみません」 「気にするな、君は私の部下ではない。後ほど聖騎士団長の所に行くのだが、まずは服をなんとかしないとな。歩けるか?」 「はい」 「では軽く何か食べてから向かうとしよう」  ヴェルジークはイオの手を取ると、優しく立たせて食事を促すのだった。食事の前にヴェルジークは神の祈りの言葉を口にしたので、イオも外国で生活していた事があり同じ風に食前の祈りを捧げた。

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