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5オネェさんと団長と金髪碧眼と
ヴェルジークは先に寄る所があると城下町へと繰り出す。城下町は白黒の木やレンガ造りの様式のようだった。上の方には城のような白亜の建物が見える。
初めてこの世界の外を見たイオは、地球のヨーロッパにある街並みに似ていると感じた。街は以外と整備され文明はそれなりに進んでいるようだ。
そして先程から、女性達のヒソヒソと会話するようにこちらを見る目から異様さを感じた。
「オレの生まれた場所にちょっと似てるかも」
「イオは、にほんという土地の生まれだったな」
「うん、日本のさらに別の土地にあるイギリスって所で生まれて日本で育ったんです」
「イオの国はいくつもの土地があるのだな」
「・・・帰れるかな」
イオは小さく呟いた。それと当時に目的地に着いたようで、ヴェルジークは扉を開けて中へと促す。
「キーダ、居るか」
「はぁ〜い、いらっしゃ〜い!ヴェルジークさまぁん」
奥からど派手なピンクの髪を七三分けにし、水色の瞳の少しガタイのいい男性が出て来た。だが口調のニュアンスがいわゆる、オネェさんという雰囲気があった。
「忙しいところ、突然すまない。この子に服を見立てて欲しい。大急ぎで」
「・・・なーに、その子?ハッ!まさかヴェルジークさまの隠し子!?」
「そんなわけないだろう。知人の子だ」
「あらそう、ふーん。まぁ、ヴェルジークさまの頼みだから今回は特別よ」
「すまないな。イオ、彼はキーダ=コレッタ。この服屋の店主で、城下一の仕立て屋だ。服を選んでもらいなさい」
「え、いいんですか・・・高いんじゃ」
「気にしなくていい。時間もないから早く」
「ほらほら早く、ヴェルジークさまが待ちくたびれるでしょ」
「は、はい。お願いします」
キーダオネェさんにめちゃくちゃ睨まれているが、ヴェルジークの手前何も言えない様子だ。
イオは着せ替え人形のように、あれよあれよと言う間に試着させられ何着かを購入してもらった。そのうちの一着を着ていく事にする。
白のブラウスで、首元はヒラヒラのラベンダー色のリボン。サラリとした生地の黒のズボンはサスペンダーで止められている。
「予想外に似合ってるわね、なんか悔しいわ」
「さすがキーダ、助かるよ」
「あの、キーダさんも水色の瞳似合ってます。妖精みたいですよね、綺麗です」
「はぐあっ!!!」
キーダはイオの言葉に、物凄い形相になり床に崩れ落ちた。そしてゆらゆらと起き上がると、イオの肩に両手を置いた。
「また、いらっしゃい。服をオーダーメイドしてあげるわぁん」
「え、ありがとうございます?」
「イオはキーダの心を鷲掴みしたようだな」
さり気なくイオをキーダから離すと、店を後にした。そして騎士団の兵舎に戻り、団長室へと向かう。
道中、またしても街の女性や兵士達にジロジロと見られた。
「なんかめちゃくちゃ見られてる?」
「イオが可愛いからだよ、きっと」
「それはない。多分、ヴェルジークさんがモテるからだな」
「モテたとしてもあまりいい事はないがな。あぁ、団長室に着いたよ」
ヴェルジークは団長室のドアをノックすると、中からものすごい大声で「入れ!」と言われ入室した。
「団長、お呼びでしょうか」
「貴様、たるんどるぞー!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」
いきなり正面から大男が剣を振り下ろしてきた。だがヴェルジークは素早く剣を抜き、受け流して相手の剣を床にねじ伏せる。
「団長、いきなりはやめてください。イオが怯えます」
「うむ!」
「・・・イオ?」
ヴェルジークが振り返ると、イオは両手を上に構えた変なポーズで固まっていた。
「どうした?」
「う、受け止めようと思って!真剣白刃取りで!」
「しらは・・・どり?」
「ワハハハハハ!わしの剣を受け止めようとは、よい心掛けだ!なかなかの度胸、気に入ったぞ少年!」
「団長、イオはこれでも成人男性です。少年ではありません」
「そうか!」
いきなりすぎて思わず団長とやらの剣を受け止めようと真剣白刃取りポーズを取ってしまったが、普通に考えたら真っ二つだ。
ヴェルジークが居なかったらと思うと、冷や汗がどっと出てきた。
「わしは、クラリシス王国聖騎士団団長ハルバースタム=チェインだ!すまなかったな、青年よ」
「あ、いえ、初めまして団長さん。イオです」
声の大きい大男は、クラリシス王国の騎士団長ハルバースタムといった。焦げ茶色の短髪に立派な顎髭、月のような銀の瞳のナイスミドルである。
「チェイン卿、予のお気に入りを真っ二つにしようとするな」
ハルバースタムが大柄なせいで後ろが見えなかったが、美声が聞こえた。ハルバースタムは少し避けると、ソファーに金髪碧眼の優雅な美形が座っていた。
聖剣の台座に居た人物だと、イオは思い出す。
「そこの黒髪、名前は何と言う」
「イオと申します、陛下」
「陛下?陛下って、まさか・・・」
「こちらは、クラリシス王国国王アーシア=レイド=クラリシス陛下だ」
「ええっ!?王様・・・」
「うむ、イオよ。ここに来い」
「あ・・・ヴェルジークさん・・・」
「・・・陛下のご所望だ。イオ」
背中を押されてイオは、アーシア陛下の前に立つ。いきなり腕を取られて、膝に横抱きされた。
「あっ!」
「陛下!乱暴はおやめください!」
「予のモノをどうしようと勝手であろう?イオ、どこまで躾けられた?」
「うっ、えっと・・・」
エメラルドのような緑の瞳に妖しく見つめられながら、スルスルとリボンを解かれていくイオ。ボタンを1個ずつ外されて鎖骨が見え始めると、ハルバースタムが静止した。
「ううむ、恐れながら陛下!わしの団長室でそのようなふしだらな行為は謹んでいただきたい!」
「おお、そうだな。それにお前の部下に殺されそうだ」
ハルバースタムの無駄に大きい咎めの言葉と、ヴェルジークの氷のような目付きにアーシア陛下は手を止めた。だがイオを手放す事はしない。
「これ!ヴェルジーク、恐れ多くも国王陛下をそのような目で見るのではない!」
「失礼致しました」
「お前、まったく反省してないであろう。まぁよい、お前は特別だからな。それより魔剣はどうなったのだ?」
「はっ、ご報告致します」
ヴェルジークは元の真顔に戻りイオから目を離さずに、報告を始めるのだった。
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