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第31話

「これだ! 『確かめたいか知りたいのなら』っていうのは、コイツはリードがメッセージ通りに従わないなら、リッチモンドの様な事件をまた起こすって言ってるんだよ!」 「でも待って」とエミリーが首を傾げる。 「あれは凄く特殊な事件だった。 スピード解決出来たのだって、犯人が典型的な無秩序型だったと言う事と、リードが『玄関の鍵を一人で開けて家に入る子供』がターゲットだと即座に見抜いた事と、ガルシアが抹消された過去の記録を掘り起こしたからよ。 パーカーは『いつか』は捕まったと思う。 でももっと犯行を続けた後の可能性の方が高い。 そんな事件を簡単に繰り返せるものかしら? 私達が1日も掛からずでパーカーを逮捕出来たのは、パーカーが型通りの行動を取った事とリードとガルシアの才能のおかげなんだから。 そして何故リードはストーカーが同じ様な事件を繰り返せると信じたの? 言い換えれば、リードは子供が宇宙人かどうかを信じて確かめたがっている犯人予備軍がいる事を、ストーカーは知っていると信じたという事でしょう? これにも何か意味があるんじゃないかな?」 ホッチナーがじっと一点を見つめると言った。 「プレンティスの言う通りだ。 リードが何故ストーカーの荒唐無稽な話を信じたかという疑問が残る。 それにパーカーは簡単に逮捕出来たが、余りに簡単過ぎた。 ストーカーがそこ迄計算しているのなら、あの事件には犯行以外に意味がある」 「ちょっと待ってくれ」とモーガン。 「ベイビー、パーカーは少年院時代に出会った精神科医以外の医者に掛かって無いか?」 ガルシアがキーボードを素早く叩いてゆく。 「…うーん…その先生がずっと主治医のまま! あ! でもパーカーの妄想を抑えて、大学に進学させて普通の生活を送らせるのはかなり大変だったみたい。 特殊な症例と言う事で、他にもボランティアで複数の精神科医がパーカーの治療方針や薬やカウンセリングの効果を主治医に助言してる! 但し非公開だから医師の名前は分からないけど」 するとロッシがボソッと言った。 「ボランティアねぇ…。 そういやリードの母親の主治医も、ボランティアで集まった精神科医達と新薬についての非公開のディスカッションをしていたな」 「それです!」 ホッチナーの鋭い声に皆の視線がホッチナーに集中する。 「ストーカーは精神科医だ。 だからリードの母親に近付けるとアピール出来たし、今朝の電話の内容でリードは相手がパーカーに関わった事のある精神科医だと解った。 パーカーを定期的に『ボランティア』で診察していたんだ。 そして母親を失ったパーカーを駒の一つとして影で操っていたんだろう。 今回の犯行のきっかけを与えたのも精神科医のストーカーかもしれない」 JJが眉を顰める。 「駒って…何の為にですか?」 「こういう時の為だ。 自分の都合に合わせて犯行を行わせる。 それをリードは今朝の電話で見抜いた。 このストーカーなら、リードを手に入れる為には何の躊躇いも無く、患者を駒に使い、犠牲者を出すと理解したから、リードはストーカーの指示に従った」 「それだけじゃねぇかもしんねぇぞ」とモーガンが身を乗り出す。 「リードはストーカーの正体に気が付いたんだよ! ベイビー、最近リードは精神科医に会って無いか?」 「リードの医療記録を見るのは気が引けるけど…無い! 勿論、お母さんの主治医の先生とは連絡取ってるけど」 「じゃあパーカー以前の事件で精神科医が関わった事件は無い?聞き込み先でも証人でも目撃者でも何でもいいから。私達が直接接触していなくて警察が接触しててもいい」とエミリー。 「…ん〜…あっ!リードのスマホの電源が入った!」 ホッチナーが「何処だ!?」とガルシアの後ろに回る。 「リッチモンド警察の前のカフェです!」 「やはりパーカーの事件が関係してると知らせて来たんだ」 「でもホッチ…!」 「何だ?」 「信号が途絶えました…。 電源を切ったみたいです」 「そのカフェの防犯カメラに侵入出来るか?」 「出来ます! ていうかやってます!」 「よし! JJ!」 JJが「はい」と言って立ち上がる。 「君はリッチモンド警察に連絡して、パーカーの自供、証拠品、家宅捜索の全て情報を入手しろ」 「分かりました」と言ってJJが会議室を足早に出て行くと同時に、ガルシアが「ホッチ!リードはいません!」と声を上げる。 「1時間前まで遡れ。 それと電源が入った時、そのカフェにそぐわない人物がいないかチェックしろ」 「了解!」 モーガンが「俺達はエミリーが言った線を探ってみようぜ」と言ってタブレットを開く。 ホッチナーも「そうだな」と答えて、立ったままタブレットを開く。 ロッシが「ああ、パーカーの前はモデルの拉致監禁の末の殺人だったな」とタブレットを見て頷く。 モーガンは「俺達は最後に何をしてた?」と言ってエミリーを見る。 エミリーがスラスラと答える。 「私とJJとあんたの三人で、あんたの現場検証の話を聞いてプロファイルしてた」 「そうだよな。 それで俺はモデル事務所やエージェントに聞き込みして、ランディに似ていてダインのサロンの様なキャッシュをチャージ出来るカードを使用しているモデルがいないか探した話もした。 あの日は生活環境までは聞き込みする時間が無かったが、候補者が70人以上いたからリストにしてガルシアに送って調べて貰うことにした事も。 そしてリストが出来上がった時、ホッチに呼ばれた。 確か17時。 ストラウスの命令でパーカーの事件に取り掛かる事になって、ロス市警に後を任せてその日の内にDCに戻ったんだ」 「ええ、そう」 ウンウンと頷くエミリーに、ガルシアが「そう言えばリスト貰ってない!」と言ってモーガンを睨む。 モーガンが苦笑する。 「仕方ねぇだろ。 突然捜査権がロス市警に移ったんだから。 担当刑事もリストになる情報は持ってたし」 「じゃあ次は俺だな」とロッシ。 「俺はシャーロット・アルマン家の執事とトラヴィス・アルマンがロス市警の受付にやって来た件とダインから聞いた話をホッチに報告していた。 それからシャーロットのスイス行きの件を調べてた。 知り合いがセレブ御用達の病院を知っているかも知れないから、当たりを付けて十数本電話をしたよ。 その返事を聞く前にホッチに呼ばれてDCに戻る事になったがな」 ガルシアが悔しそうに「そう!あのスイスの病院、ペンタゴン並の厳重さで!でもあとちょっとで侵入ってとこでホッチから連絡があって、パーカーの事件に取り掛かる事になったの〜!」と言う。 その時、ホッチナーの「…それだ!」という呟きと共に、ホッチナーの手からタブレットが落ちた。

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