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第6話

 夏休みはあっという間にやってきた。終業式の日、長谷川に連絡先をきかれた。夏休み中にわからないことがあったら連絡したいから、と。僕は夏休みのはじめから、いつ連絡がくるだろうと浮かれていた。もし着信がはいれば、すぐに出るのは格好悪いから、すこしだけ待ってから出ようとも決めていた。だけど夏休みがはじまって一週間、長谷川からの連絡はまだきていない。考えてみればそうだ。夏休みの間に陸上部は大会がある。最後の大会になるから力をいれていると言っていた。朝から晩までグラウンドにいるのだろう。僕がずっと見ていた長谷川の走りの集大成だ。僕は僕のできることをしておこうと、参考書をひらく。ひとり机に向かって公式を解いて、ふと顔をあげたときに長谷川はいないと、すべては暑さから生まれた蜃気楼だったのではないかと思う。会いたい。名前を呼んでほしい。長谷川の声がすきだ。指先もすきだ。喉ぼとけもすきだ。鎖骨もすきだ。笑った顔がすきだ。長谷川の汗が首筋をつたって、シャツの中に入って、胸のあたりを通過するのを想像する。息をのむ。長谷川の手が僕のシャツをめくり、乾いた唇をおしつける。僕の名前を低い声で呼ぶ。熱が集中して硬くなって疼いているものを握られる。そして長谷川の熱をおびて脈打つものを当てられる。そのとき甘えるような声がでた。  僕は一心不乱になって、自分自身をしごく。そうやって精密に作り上げた長谷川を動かしていく。喉を震わせながら射精したあと、長谷川なんてどこにもいなくて、荒い自分の息遣いだけがあった。こんなことをいつまで続けるのだろう。疲労感と罪悪感が一気に押し寄せてきた。だけど会いたかった

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