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 暑い中、どれだけ待っていたのか由宇の頬が紅潮していた。  長時間外で待機する覚悟でスポーツタオルを首にかけ、自宅前のチャイムを押さなかった少しの遠慮と躊躇が由宇らしい。  だが俺の部屋に入るや否や、問答無用とばかりにキッと睨み上げてきた。 「どういうつもりなんだよ!」 「……真琴のこと? だよね?」 「そうだよ! 電話かけてきたけどめちゃくちゃ泣いてて何て言ってるか分かんなかった! でも怜から別れ話されたってとこは聞こえた!」  ……真琴、理解してたんだ。  いつもいつも、「怜様またそんな事言って〜」と笑って済ましていたのに、あの日の俺の言葉は伝わっていたの。  俺はずっと本気で言っていたんだけれど……真琴の理解範疇の基準が分からない。  自己嫌悪に沈んでいた二日間、真琴はどうしているだろうかと胸を抉って自身を追い詰めていたが、理解していてくれたのならいい。  そのまま俺のことを嫌いになって、俺の居ない世界もあると知って、俺が居なくても平気だという事に気付いてくれたら本望だ。 「……由宇も言ってたでしょ。 俺にその気がないなら思わせぶりな事するなって。 終わらせただけだよ」 「意味分かんない! あれは……っ、あれは俺、発破かけたつもりだったんだよ! 思わせぶりな事してないで、早く付き合っちゃいなって!」 「……そんな事言われても」  由宇は、俺にこんなに声を荒げた事がない。  前々から感受性豊かで泣き上戸なのは知っていたけれど、この件は果たして由宇の瞳を潤ませるような事なのかな。  しかも発破をかけたつもりって……俺と真琴を一番近くで見てきた由宇に言われると、「だから何?」と反省の色無く言い返すのは違う。  しばらくぶりに俺の部屋に入った由宇は、座りもしない。  当事者でもないのに、感情を昂ぶらせている。 「怜、真琴のこと本当に嫌いだったの? 三年以上も嫌いな相手とエッチしてたっていうの?」 「由宇、もうその話は……」 「この話をしにきたんだよ! 俺の質問に答えて!」 「…………っ」  思わず「はいっ」と萎縮してしまいそうなほどの剣幕だ。  俺達の関係が筒抜けだからってすべてを曝け出すのはどうかと思ったが、もうこの際本心を打ち明けてしまえと腹を括る。  一晩悩んだ末にスマホの電源も入れられなかった、脆弱な俺が一番の悪なのだ。 「……嫌いじゃない。 嫌いだったらまず勃たないよ」 「勃たな……っ、そ、そうだよね!?」 「だからってそれが好きに直結はしない」 「それは分かる。 俺には理解出来ないけど、そういう人がいるのも知ってる。 でも怜は違うじゃん。 そういう人達は、エッチ出来れば誰でもいいんだよ。 真琴としかしなかった怜は、そういう人達には当てはまらない……いや待って。 怜、真琴以外の人とエッチした事ある?」 「した事ない」 「ほらね!!」

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