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【前篇】風の名は

……いっちまったなぁ。 花片が盃に灯る。 ゆらり、ゆらり、ひらひらり 透明な波を花が揺らす。 ガラにもねぇ…… 「246勝、247敗……」 こんなもんの続きを楽しみにしちゃいねぇよ。 壊すものはなくなった。 壊したい世界は、もうこの世のどこにもねぇ。 ひでぇ事しれくれやがる。 結局俺は、246勝247敗の続きを待つしかねぇじゃねぇか。 長い待ち時間になりそうだ。 (その間……) 酒でも飲んで暇を潰すか。 いっそ、酔い潰れてみるか? それこそ、ガラにもねぇ。 なにに酔うってんだ。 (この場所は、綺麗だな) 「君には、もの足りませんか?」 桜の河が揺れた。 河を流れる屋形船の航路が変わる。 「なんで、あんたッ」 「私のお伴は、君の役目でしょう」 「死出のお伴をする趣味はねぇよッ」 なんで来ちまったんだ…… あんたは終焉を欲していた。 あんたは終わりを望んでいた。 終わりなき不死の生を、自らの意志とは異なる理の外で得たあんたは、終わりなき生の果てに、終わる事を夢見ていたんだ。 「だけどよッ」 あんたを必要とする人間がいるんだ。 「あんたは必要とされてる」 あんただって。 やること、残ってんだろ…… あんたを必要としている奴らが、この世界にはいるんだ。 (そいつら、ほっぽりだして) 「こんな処に来ちゃいねぇ」 そうだろう。なぁ…… 「松陽(しょうよう)先生」

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