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最終話

五日目 挿入  最終日は手をつないで海岸を歩いた。  体を寄せて、指も絡ませて、砂浜を踏んではしゃく子供たちを見つめた。  そして、子供たちが寝静まり返った深夜、一時間くらいキスと愛撫を重ねる。唇と唇を触れ合わせて、熱い口づけを交わす。体をくねらせる裕に触覚が麻痺するほど接吻を続けた。  感じてくれるのか、首を振って拒まれるのではないか。そんな不安も、濃密な逢瀬をちぎり重ねるうちに掻き消されていく。ゆっくり、そしてじっくりと愛撫して、体は赤く火照って、燃えあがる。 「太郎の膨らんでいく」 「裕さんのもひらいてますよ」 「……あ、ぁ。あっ」  じゅるじゅると太郎の雄を咥えながらも、指と肉厚な舌で丹念に嬲られる。はやく、欲しい。浮きでた血管を舐めとり、張りつめた屹立を吸う。後孔に指を挿入され、皺を舐るように唾液で柔らかくほぐされ、強ばりを解かれていく。 「……ッァ」  真っ赤になりながら、濡れた視線を投げた。 「そろそろ、いれますね」 「んぁ、あ、……」 「ゆっくりいれます」 「……ん、はぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ん」  濡れてつやつやと熟れて光る窄まりに、怒張をあてて音を鳴らしておさめた。 快感の期待に目を潤ませて、裕の触れた指先から微かな震えと振動が伝わる。ぐらぐらと眩暈を感じながら、二人は心と体が悦びに打ち震える。 「はぁ、ぁ、気持ちいいです」 「あ、あ、っ……」 「裕さん、愛してる」  太郎が好きだ。愛している。 「……裕さん」 「太郎……」  深くキスを落とすと、か細い声が漏れて、胸の尖りはほんのりと膨らんで赤みを帯びている。腹の凹凸でどこまではいっているのかわかる。 「なか、気持ちいい……」 「はぁ、あ、……すき……っ」 「あ、煽らないでください」  キュッと窄まりを締めつけられて、また、むくむくとなかで膨らむ。 「あ、太郎」  ピクンと裕が揺れた。少し動くだけで、敏感になって腰が動いてしまう。見つめ合いながらも、お互いの性器が触れたところから発熱していく。膨らみと強ばりが象られ、どろどろと液体となり一つになっていく気がした。 「やっと時間だ。……動きます」 「……ん、んぁ、ぁ、っ」  ゆっくり、ゆっくりと揺さぶられ、びくびくと裕が震えた。深い悦楽の波にのまれ、気が遠くになりそうなオーガニズムが荒波となって襲ってくる。  キスと粘膜の音が響き、このままずっと繋がっていたい。引いて、埋め込むように挿入をゆるゆると繰り返す。乱れた髪が濡れて額にはりついた。 「すき、あっ、ん、すき、たろ……」  熱くて、溶けてしまう。愛されたいという受動的な感情よりも、不思議に愛したいという能動的な欲望が強まっていく。 「裕さん、愛してます」 「……ぁ、ぅっ、たろ、愛してる」 「嬉しい。たくさんいってください」 「あ、あ、あ、たろ、た、ろ、なかで、いく、いってる、いってる」  腰を揺らしながら、ピタピタと柔らかな陰茎を震わせた。勃起はせずに割れ目からはとぷとぷと汁がこぼれ、腹は透明にぬれて、蜜壺から溢れるようにひろがっていた。 「ここ、好きですか?」 「ああああ、だめ、あ、あ……」 「それとも、ここですか?」  探るように押しあてると、裕はふるふると首を振って太ももが痙攣しては太郎の鼠蹊部に脚を巻きつける。 「あ、っ、あ、そこ、そこ、あたってる」 「ここですね」  こめかみにキスを落として、裕の涙を吸いとった。爪を立てて、腰に足を絡めて、はぁはぁと裕は絶頂を迎えつづけた。  快感に悶えながら、紐で結ばれたように縫い留められる。逃げられない運命の桎梏(しっこく)から解き放つように裕は乱れた。固くなった頬がほぐれて、唇がかすかにほころび、唾液がだらしなく垂れる。すべてをひろげられ、溶かされて悦楽に堕とされる。 「きが、へんに、……な、る……」 「ゆっくり動きますよ。……裕さん、逃げないで」  太郎は笑みを浮かべながら、ゆっくりと速度を落として、秘めたしこりを押すように突いた。裕の尻が逃げようとして、太郎は深くキスをして繋ぐとひくひくと窄まりが締める。 「ぁ、あー……ぁ」 「愛してる」 「……っ、う、ん、あ、あいして、る……」  ゆっくりと擦って、収縮を繰り返す腹のなかで深い悦楽が花びらのように散る。胸の蕾もぷっくりと尖って赤みを増していた。 「僕もいっていいですか?」  ぱくぱくと半開きに動く唇にキスを落として、太郎は深いとこまで突くと精を吐きだした。  ゴムをして、ピルも飲んで、避妊はしていた。それでも流しこまれる熱を感じながら二人は求め続けた。 「ぁ……、ああ、あ、すき」 「僕も、愛してます」  解き放たれても、長いまま繋がってお互いを離さない。ふたりは契りを交わしながら深い充実感にひたった。互いを縫い合わせたような心地よさに離れられない。  やっと出会えた魂の番。感謝と悦びに涙が止まらない。  翌朝、目を覚ますと隣で太郎が気持ち良さそうに眠っていた。子供たちはまだ起きそうにない。栗毛の髪を梳いてやると口許がゆるむ。窓辺からは朝日が黄色く漏れでて、すでにじっとりとした暑さが見てとれる。  幸せだな、と裕はなんとなしに思った。

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