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第1話
想いのこもったものには魂が宿る──なんてのは、古今東西どこでも言われていて、大事にされた人形に霊が乗り移ったとか、言霊なんてやつもその仲間だ。それが精霊と呼ばれたり、霊と呼ばれたり、時には悪魔だったり神様だったり、魂だったりするんだが、とりあえず俺はそういう存在だとわかってもらえればそれでいい。
で、俺は何に憑いているかと言うと、この男の持っているチョコレートに憑いている。このチョコレート、何を隠そうこの男の手作りだ。と言っても、買ってきたものを溶かして固めただけだが。しかも、妹が作っている横でちょこっと手伝いをしただけなんだが……。
普通はこういうチョコレートには俺達は宿らない。当然だ。強く深い想いだけに宿るものなのだ。しかも、俺達は想いの強さに比例して強くなる。と言っても闘うわけではなくて、輝きが増す感じなんだが、どうやらこの男、なかなかに強い想いを抱いているらしい。
実際、この男の手にしている紙袋の中、──この男、見た目は硬派だが中々の優男で数多の婦女子を虜にしているらしい──2、30個程のチョコレートが入っているだろうか。その中に仲間の宿っているものは1つ、つまりは「好きです」と告白してチョコレートを渡してきた婦女子の中で、本当にこの男を恋い慕っているのは1人だという事だ。まだ昼前なのでこの後まだ増えるのかもしれないが。
さて、この男の持っているチョコレート、つまり俺の宿主だが、制服のポケットに放り込まれている。見た目はシンプルで大きさは包装まで入れてもチロルチョコ3個分と言えばわかるだろうか。……つまり見た目、大きさ、扱い、全てが俺には大分不釣り合いだ。しかし、俺程の力になると仲間は服越しでも俺の存在を感じているだろう。俺達を感じる力の強い人間も感じているかもしれない。
──おい男、お前の想いはダダ漏れだぞ~!!
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