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目覚め、隠す

「……と、あ……と、おーい敦人くーん」 「っ! ッダ?!」 起き上がってすぐにうなじが痛みだす さっと手を当てると絆創膏のようなものが貼られている 「おはよう……ていってもまだ夜中だけど ごめんね、ついやりすぎてしまって 久しぶりに沢山酒飲めて思ってたより酔ってたみたいで 泥酔していた辻村くんをうおぉっと!?」 ごちゃごちゃ言っている武岡さんの顔に殴りかかるが避けられる 全部思い出した こいつがやったこともやられたことも 盛大に舌打ちをして相手をにらみつける 「……………………帰ります」 罵詈雑言浴びせたいところだけどなけなしの理性が俺を押し止める 一応上司なんだ、こんなことで更に粗相をするわけには…… 「口が悪い敦人も良かったけどなぁ」 「なまっ……あー、ご迷惑おかけしてすみません 帰らせていただきます」 足を無理やり立たせ出ていこうとすると腕を掴まれる 「このマンション出るときも鍵必要だし一緒に行こうか ……その道中で少し話をさせてほしい、かな」 渋々お願いしますと返事をして一緒にエレベーターに乗る 「ええっと……酔った勢いとはいえ辻村くんに手を出してしまったのは本当に申し訳ない できる限りの謝罪はさせていただきます」 「……俺、いえ私も大変ご迷惑おかけしてしまい申し訳ございませんでした これ以上この話に関しては蒸し返したくはないので お互いになかったことに「それはいやだなぁ」 「は?」 おれがマヌケな声を出したと同時にエレベーターが開く 武岡さんが困ったように、でも獲物を見つけたハイエナのような目で 「だって僕、敦人のこと気に入っちゃったからなぁ ……敦人がオメガだったら今すぐ無理矢理にでも番にしたいくらいに」 ……ブワッと全身から嫌な汗があふれでてくる 今すぐ逃げないと食い殺される そんな馬鹿げたことが頭に浮かんでくる 武岡さんが歩きだしておれも後ろに下がる が、すぐに相手が相好をくずす 「って思うけどお互いにアルファだし無理な話なんだけどね この度は本当に申し訳ない 謝って許されることではないとわかっている 傷の治療費とかはすべて僕が受け持つから 他に何かあったら言ってくれ」 「いえ、そんな…… ……ぅ、では治療費の方だけお世話になります」 それ以上関わりたくなくて足早にマンションをあとにする 「! 終電……ぎりぎり間に合う! 走らないと」 (……………) なんとか家へとたどり着く 二十分ほど歩いただけだというのに息が上がる 明らかにおかしいけれどさっきのせいだと思い重い体を動かす 「はぁ……休み前でよかった いや、何も良くはないけれど ……体すっごい重いな ゆっくり休んで、今日はもう寝よ」 (…………ズ) ​─────── 会社に入る前にそろっとうなじを触る 傷隠しテープが貼られていることを確認する ばれないだろうか いや、もしバレてししまったらなんと言い訳すれば…… 「辻村さんおはようございます」 「お、おはようございます」 少し不思議そうな顔をして会社に入っていく ……大丈夫だ バレやしないだろう 大きく深呼吸をして会社へと足を踏み入れる (……ズズッ) 「辻村さん、今日体調悪いんですか? その、少し顔色が悪いように見えて……」 「……いえ、大丈夫ですよ ああ、でも最近肩こりが酷くてそのせいかもしれません」 そうなんですかー、私も最近肩こりひどくてーという話になんとなく相槌を打つ ……実際、かなり体調は悪い 腹、いや腰?なぜだかわからないがそのあたりが痛む 薬を飲んでも湿布をはってもおさまらない 日に日に痛みが増していく一方だ (ズズッズズズッ) なんとか今日の仕事が終わり同僚と話しながら出口に向かって歩く 「おっとあがりかい?二人ともお疲れ様」 「武岡課長、お疲れさまです」 「……お疲れさまです」 会いたくない人にあってしまった 足早に去ろうとしたけれど同僚が話しかけてしまい、邪険にするわけにもいかず三人で玄関まで歩く 「辻村くん? なんだか少し顔色が悪くないかい?」 武岡課長が心配そうにこちらを覗き込んでくる 「……大丈夫ですので それでは失礼します」 足を踏み出そうとして視界がグニャリと歪む 「ッ?!」 「辻村さん?!」 「辻村くん大丈夫かい!?」 遠くから声が聞こえるような なにか言っているのはわかるけれど何を言っているのかわからない 床にぶつかる前に体が支えられてふわりと浮き上がる感覚がする 「……嫌だと思うけど少し我慢して」 そしてぷつりと意識が途絶える 「つ、辻村さん大丈夫ですか!?」 わたしが触るよりも早く課長が辻村さんを支える そのままお姫様抱っこのように抱き上げる 少し苦しそうな顔をして辻村さんになにか言っている 「あ、ええっと吉岡さん、だったかな 申し訳ないんだけど僕のポケットからキーケース取ってもらってもいいかな? そのまま車の鍵開けて 辻村くん体調が悪そうだからこのまま病院につれていくよ」 「は、はい!」 失礼します!っと課長のポッケから鍵を取り出し車までお供する 「ごめんね、ありがとう助かったよ」 「い、いえわたし何もできなくて……あ、助手席の方のドア開けますね」 「ちょっと救急で入れないか電話するから見てもらっていてもいいかい?」 「は、はい!」 顔が真っ青でお腹が苦しのかうずくまるような体勢になっている 背中でもさすったほうがいいのかと思い近づく ……ん? なんだろうこの甘い匂い 嫌じゃないむしろ…… 「ここまででいいよ ありがとう手伝ってもらって」 「あ、いえ! 何もできなくてすみません 辻む……」 お大事になさってくださいと話しかけようとしてぐいっと後ろに引っ張られる 後ろを振り返った瞬間熱を一切感じられない目で課長がわたしを見てくる 「……ごめんね手荒な真似して 早く連れて行ったほうが良さそうだから」 「……! す、すみませんお願いします」 ぞわぁと鳥肌が立つ ……一瞬すごく怖かった 番を守るアルファのような目をしていて 勢いよく発進する車をぼぅっと眺める 「大丈夫かな辻村さん……」 佇まいを直し帰途につく ポツリとつぶやく 「んー……さっきの匂いオメガみたいな匂いだったけど違うよね 香水でもつけてるのかなぁ」

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