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「ふふん。どうかな? 九蔵はこういうことは好きかい?」
「好きじゃないです……っ」
「うっなんて攻撃力の高い言葉……!」
九蔵が燃えるような頬を震わせて睨むと、ニューイは大きなダメージを受け、ガックリと項垂れた。
攻撃力が高いのはお前のほうだ、というセリフはゴクリと飲み込む。どうせ言ってもわからない。
「九蔵〜好きじゃないは私を殺す呪文である〜……心配しなくとも、舐めた口で舌を入れるキスは控えるから平気だよ?」
「バカっ……は、恥ずかしいって……なんで飲んじゃうんだよ……っ」
「? 飲まれるのが好きな人間の男は多いからね」
ほら見たことか。
ニコニコ笑顔で「九蔵を喜ばせたい」と言うニューイには、九蔵の羞恥心なんてわかりゃしないのだ。
「それじゃあ、九蔵は私にどんなことをされると気持ちいいのだ?」
「いっ……いいからなにも聞かずにケツにち✕こ挿れろください……! セックスってそれ目的だろがいっ!」
「ムードがないのだよ!」
せっかく盛り上げているのに! とショックを受けるニューイをせっついて、九蔵はさっさとズーズィ印のゴムを投げつけた。
柔らかな金色の髪とルビー色の瞳を持つ王子様が、自分なんかの粗相を受け止めるトンデモ暴挙。
あまつさえわざわざ飲み込む瞬間がわかるように触れさせるなんて、あんまりだ。
(くっそ……仕事みたいに、セックスにも実技研修あればいいのに、なんで人生はいきなり本番させんのかね……っ)
「暗転しろよもう……っ」
九蔵は不思議そうな顔でゴムを装着するニューイを横目に、真っ赤に染まった頭を抱え、小声でぐあぐあと悶絶した。
ニューイに触るのも触られるのも長く持たない。触れたところが全て溶ける。
舐めたり噛んだり吸ったり咥えたり飲んだり、五感で犯されると、ダメになった。
気持ち悪い声が出るし、不細工な顔でマヌケに美しくもない裸体をニューイに晒す。考えただけで吐きそうだ。
早く終わってほしい。
自分の精液の味が不味くないかどうかが気になるようなセックスだと、なにも集中できない。
「よし。お待たせ九蔵」
「待ってねぇからマジではよ突っ込んで、終わらせてください。俺のために……!」
「終わ、……ウゥム……」
パーフェクトな裸体を晒してにじり寄るニューイに、身の振り方がわからない九蔵は、なるべくムードとやらを破壊して言った。
するとニューイはキョトンとしたあと、すぐに不満を呻いて九蔵の足をグッと掴む。
「残念だが、挿れて出して終了する交わりを私は知らないのだ」
「ぉあっ……!」
「それに、まだ始めてもいないのに終わってしまうと困るっ」
「はっ……!?」
それからそのまま九蔵の足を引き寄せ大きく左右に広げた。
ニューイは九蔵が驚いている間に、自分の膝の上に九蔵の尻をテンと乗っける。
そして九蔵がなにかを言う前に、九蔵の足を掴む手にキュッと力を込め、ニューイは拗ねたように唇を尖らせた。
「あのな……言っておくが、これまでのキミとの餌やり中、こっちはずいぶん我慢をしていたのだよ?」
「っ……」
ドクッ、と胸が軋む。
恥ずかしくて熱かった胸に、別の熱が入る。嬉しいというシンプルな熱。
〝なんでもないフリをできていたのは、何百年も生きている悪魔だからだ〟
ニューイはそう言いたいらしい。
その言葉を裏付けるように、ニューイの欲望は九蔵の尻のそばでラテックスをまとい、熱くそそり立っている。
餌やり中は全く反応していなかった。九蔵はいつぞやそれを嘆いた気がする。
けれど、今は滾っているのだ。
これから九蔵を貫くことに、たいへん興奮している。九蔵を性の対象に見ている。
ニューイの顔に似合わないふしくれだった逞しいモノ。最中のニューイも、予想していたよりもっとずっと〝雄〟だ。
「っ……この体勢、恥ずかしい……っ」
今からこの雄に抱かれるのだと思うと、九蔵は有り余る恥辱に身が焦がれた。
困ったことに、待ち望んでいるからだ。
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