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「私がキミの言葉でどれだけ興奮するかわからないなんて、九蔵の死にたがりさんめ」 「あっ……は、ぁ……っ!」  思わず体がビクンッと仰け反る。  なにもしていないのに煽っているなんて、酷い言いがかりだ。  けれどニューイは「言いがかりじゃない」と頬を赤らめ、眉間に皺を寄せて恨みがましそうに九蔵を睨んだ。  九蔵の腰を掴み直し中の具合を確かめながらも、抜けるギリギリまでズルッ、と退く。 「まったくキミは、たまには発言の責任をとってほしいものだ、ねっ」 「ちょ、待っ、ンンっ……!」  そのまま逃げられない哀れな尻を引き寄せえ逞しい怒張を根元まで一息にズブッ! と突き刺されると、目の奥に星がちった。  柔肉を掻き分けて貫く雄。  九蔵は足をグンと伸ばしてビクビクと痙攣する。  だがニューイは体の収まりを待ってはくれない。  そのまま引いては押し込み、初々しい粘膜を引きずって激しく小刻みな律動で肉穴を穿つ。──まだこんなの、無理だってよ……! 「あっ……待て……ヒっ……待てって、あっ……ニューイっ……ぁあっ……!」 「いいや待てない。食事ではなく人間の恋人を大事に抱くというのは、悪魔にとってかなり難しいのに、酷いじゃないかっ」 「無理っ……激しいって……っふ、ぁっ……も、すげぇ擦れてる、からぁ……っ!」 「余裕なフリもたいへんなんだぞっ?」  キミが普通を望むから! と当てつけのように猛然と攻められ、九蔵はヒィンと泣きたいような嬌声をあげた。  それでも痛みはない。  トロけた内部は一突き一突きが大ぶりで力強い律動を深く受け入れ、獰猛な激しさにも襞はギュウギュウと絡みついて応える。  丹念に丹念に解され焦らされ、優しく甘ーくビギナー用の腰使いであやされていた胎内は、完全に堕ちきっているのだ。 「ん、あ、っもう、い、いく」 「はっ……」 「いく、イっ──んっ……んん……っ!」  快楽が限界を迎えると、九蔵はドクンッ、と張り詰めた屹立の先端から白濁液を迸らせた。  断続的に吐き出される濃厚な精。  ドクッドクッと飛び散る先からしたたり、自らの腹を汚していく。  脳が満ちるほど濃厚な性欲は、心得たように悪魔の周りに集まった。  若さが育った甘美な味わい。  ニューイの舌を虜にする味だ。中だけで出せるほど相当気持ちよかったことが味でわかることを、九蔵は知らない。 「あ……ぁ…も……あ〜……っ中は……強すぎる……はっ……癖になったら困る……」 「まったく……九蔵は、悪い子だよ」 「っん……は、え……? なん……」  ニューイはひくん、ひくん、と絶頂の余韻に脱力する九蔵の汗ばんだ額をなでた。  濡れた髪をかき分ける指に、九蔵は淫蕩していた思考を慌てて手繰り寄せてニューイを見つめる。  悪い子? なぜだ。自分はなにか悪いことをしただろうか。  人生的にも恋人的にも初セックスを終えたあとでそう言われると軽率に死ねるぞ。 「んや……ごめん、俺なんかセックス、間違った……? ニューイ……まだ、イってねぇから、とか……」 「いいや、キミとの交わりは凄く気持ちいいぞ? 終わるのが嫌で、私が個人的に我慢しただけだ」 「終わ、……それは別に、イけばいいんじゃないですか、ね……その、何回でも……」  ニューイの言葉を気にかけて拗ねた気分だった九蔵は、ニューイの愛を感じてトクンと胸を高鳴らせた。  終わりが嫌で我慢しただと?  なんて嬉しいことをするんだ。いじらしい恋人の我慢がかわいい。  九蔵は体力が少なめの自分の状態を理解しているものの、この愛を受け止めなければ男じゃない。 「……性欲、食われてもすぐ戻っちまう」 「っふ……」  そんなことを気にするならイってしまえとばかりに絶頂の余韻で淫蕩する下肢に力を込めると、ゾクゾクと官能が走って喉奥から「ぁっ……」と鳴き声が溢れた。  微かに揺れる腰に合わせてキュ、キュ、と締めつけられると、柔軟な襞が男根を包み込んだまま万力のように収縮する。  ニューイは眉根を寄せて震えた。  熱く、ねっとりとトロけるようにまとわりつき健気に蠕動する、九蔵の中。  深い仲になることから逃げがちな九蔵の体は、困ったことに、一度受け入れると絶妙な締め付けで絡みつく素敵な出来栄えらしい。  なのに悪魔の体しか知らない。  人間の中では高身長で女々しくもない大人の男でありながら、雄としての悦びを味わうことなく溺れていく。  人間の男に抱かれたこともない。  唯一知っているのは、悪魔だけ。  そんなあまりにも淫らでそそる恋人のカラダに歓喜と愉悦を感じるニューイは、自分を手の施しようがない悪い子だと、自覚する。 「本当に、欲望というのは厄介だ……大事なものほど、めちゃくちゃにしたくなる……」 「え……? ン……ぁ…はっ……」  満ちた独占欲で達しそうになったニューイは、はぁ、と火照った息を吐いた。  ──やっとお互いを愛し合った二人は、際限なく求め合わずにはいられない。  付き合いたての恋人同士というものは、往々にしてそういうものである。

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