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 どこの世界に左手をもぐプレイがあるというのだろうか。あるとすればそれはスプラッタの世界だけである。 「もちろん右手も」 「もぐのな」  九蔵はドン引きだ。  先程までのニューイさんオールウェルカムちゅきちゅきラブラブ九蔵さんモードが秒で冷めた。  笑顔のニューイは外した左手を九蔵の胸の上にトン、と置き、続いてもいだ右手も置く。 「ンひっ、っは……っ?」  すると両手は九蔵が青ざめるより早くひとりでに動き、なんと九蔵の乳首を軽く弾いたのだ。 「ちょ、っあ、も、もげた上に勝手に動くのかいっ」 「フッフッフ。変身能力のない私の今の姿は〝もしニューイが人間だったら?〟という仮初なのだよ。実際の私は骸骨だろう? 仮初の姿でも、骸骨同様分解可能なのだ」 「ホラーじゃないですか、っぅ」 「怖くなんてないさ。悪魔的にはなんの変哲もない人間のほうが不思議だぞ」 「ん、んっ……」 「骸骨類はバラバラになれるものである。まぁあくまで擬態。変身ではないので、私は私以外の何者にもなれないのだけれどね」  九蔵は這いずる両手に愛撫され、官能の気配に悶えた。  事情はわかったがもいだ手で人様の乳首を弄ぶのはやめてほしい。  本体と同じく巧みに乳首をかわいがる愛したがりな両手に喘がせられ、衝撃展開に驚いていた一物がムズムズと疼く。  ムフムフと笑うニューイの手首から先には、透明なゲルの塊を思わせる手もどきが生えていた。  ということは、実質愛撫する手が四つになったということである。  悪魔かこのイケメン。  これで乳首でガッツリ感じる男になってしまったら責任を取ってほしい。  そこ。手遅れとか言うな。 「はっ、落ち着かねぇな、これ……っん」 「すぐに慣れるとも。なんせ九蔵は覚えが良くて器用な自慢の恋人だからね」 「これ慣れていいことじゃない気が、っ」  笑顔で答えるニューイは、九蔵の尻を膝に乗せたまま前をくつろげた。  デリケートな箇所が傷を負わないようジェルを塗りつけ、軽く育てた雄をクチ、と濡れた割れ目へ先端を宛がう。  両手が絶えず与える乳頭への刺激と挿入の期待感に、体がブルリと震える。──早く、挿れてくれ。 「はっ……ニューイ」 「……フゥ〜……」  九蔵は喉元まででかかったセリフを恥じらいで飲み込み、視線に乗せて名前を呼びながらクッションに頬ずりしつつ見つめた。  すると目が合ったニューイは一瞬黙り、その後頭が痛いように天を仰いでやや震える。  どうした。限界オタクの霊にでも憑かれたのか。 「最近、九蔵が私と目を合わせたがらなかった意味がよくわかるようになったよ……」 「はい?」 「九蔵と目を合わせるとろくなことを考えない自分が、千歳超えの悪魔ではなくただの雄だと痛感している……!」 「なんだかよくわかりませんが……そろそろ焦らしプレイはなしっつー宣言違反で訴えたい俺さんですけど……?」 「つまり九蔵、キミは罪深い」 「ゔ」  小声で唸るニューイへ桃色に染まった頬でボソボソと訴えると、黒ウサ耳をへにょりと下げたニューイがドアップになった。  キスで誤魔化したらしい。  誤魔化される自分が憎い。 「っぅ、ン……っ」  顔中にキスをされながら、ズプ、と丸い部分が入り口を押し分けて潜り込んだ。  九蔵は動きに合わせて息を吐く。  教えられたとおり、受け入れる。  待ちわびた肉棒はめいっぱい中を拡げつつ襞を擦って進み、ヌルル、とスムーズに根元まで収めた。 「あ……」  トン、と腰が当たる。  これを包み込むと、期待にドクドクと脈動する肢体がブルッ……と歓喜に震えるのだ。  一息に貫かれる時の受け入れ方も慣れたもので、挿入の瞬間に息苦しさと膨満感があるものの、すぐに充足が支配する。 「キミの中は入るたびに具合が良くなるな……私を堕落させる気だったなら、大成功である」 「そんなこと、っん……あ、んっ」  普段より色気のある笑みを浮かべたニューイは、九蔵の唇をベロ、と舐め、ユルユルと動き始めた。

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