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(そういや、中は……お初な気が……)
「ぅ、ふっ……」
そう思うとなにやら込み上げるものが湧き上がった九蔵は、絶頂に支配され淫蕩する肢体を、ブルッ……と震わせた。
紳士的な悪魔様がマナーもしっかりしているせいで、九蔵はニューイに、いや誰かに種を注がれたことなどない。
今日はうっかりで、たまたまだ。
けれど、なぜだろう。
ニューイだからこそ、証を残されて嬉しい気がする。
冷静に考えると後処理は面倒だし、抜きかけて出されたせいでおそらく今抜かれると溢れる気もするし、いいことはないのだが。
「ん……は、ぁ……」
「はっ……覚えが、良すぎた……っ」
度重なる行為で感度抜群の九蔵が予想外にイッてしまい、強く締めつけられ抑えが効かなかったらしいニューイは、う〜っと唸って脱力した。
あそこまで絞られると思わなかったようだ。自分で仕込んだくせに。
(あ、あー……熱い……)
「ふ……っ」
焦燥を滲ませる声と吐息。
悪魔の精は、人間より多く温度が高い。ニューイの感じる声を聞くとなんとなーく興奮するというか、浸ってしまう。
トクッ、トクッ、と鼓動し吐精し続けるモノが抜かれないよう、九蔵は下腹部にキュゥ……と力を込めた。
射精を終えたニューイは我に返り「あぁ、私としたことが……!」と眉を下げた。
「ごっごめんよ九蔵っ。魂を強く触りすぎたみたいだ。驚かせてしまったのだよっ」
「う、ん……」
「意識はあるかい? お腹は気持ち悪くないかい? うぅ、人間の男に悪魔の精液を注いでどうなるのか私にはわからない。一度やめて中を綺麗にしておこうっ」
「ん……それは、いい、かね……」
「へっ……!?」
予想外の返事に、九蔵の体を気遣ったニューイはキョトンと目を丸くした。
九蔵は散々な有様だ。
赤く紅潮した頬。シーツに散る乱れた髪。自分の出した白濁液で下腹部を染め、たくし上げられた湿ったクチャクチャのインナーに顎を埋めている。
華奢ではなく骨ばった成人男性の肢体はすっかり汗ばみ、体液に汚れていた。
そういう姿の九蔵が、トロン、と熱に浮かされ濡れた瞳でニューイを見つめ、ユルユルと口元をほころばせる。
「な、もっかいやって、くんねぇかな……俺がお前をイかせたって、感じるから、気分いいんだよ……」
「…………」
「だから……もっかいイってほしい……かな」
熱っぽく色気を纏わせる視線に映し出されたニューイが、一瞬スンッと真顔になった。
そういえばと思い出したのだ。
性に疎い九蔵だが、魂を触られた絶頂で正気を失うと、実に官能的な表情や声、視線で乱れるということを。
快楽に酩酊する九蔵に悪気はない。
もちろん自覚もない。
自分の腹の中で脈動し、出したばかりなのに質量を増したモノが愛おしく、襞が無意識に包み込んで絡みついた。
中に孕んだ肉が抜かれたとしても、なにやらしばし残るものがあると思うと、もっと出してほしいとすら欲が出る。
正気を失った九蔵に、赤い頬のニューイははぁぁぁ……! と深いため息を吐いた。
「あのね……九蔵がいつもより締めるから、私はそっと抜けなかったのだぞ……?」
「あっ……!」
「気分がいいと言うが、キミはたぶん酔っている。悪魔の精液に酔う体質の人間はたまにいるのだよ」
「ん、っニューイ」
「魂に触れても酒に酔っても、キミは甘えんぼうになってしまう……今はその二つともだろう? 一時間なんてあっという間で、足りないと甘えるに決まっているっ」
「そこ、イイ……っあ、んっ」
「聞いているのかい? 九蔵。正気に戻った時、きっとまたムシになるぞ? キミは恥ずかしいと黙るのに、こういう時ばかりよく話す……!」
「あっ、あっ」
ニューイは鳩尾の魂をクチュ、クチュ、となでながら唇を尖らせ、軽く腰を揺すって発情しきった九蔵の中をあやす。
ぐったりと脱力し喘ぎ声を漏らす九蔵は、ニューイの言葉を半分くらいしか理解できていない。
ただ、欲情に満ちてギラついたルビーの瞳に、自分だけが映っていた。
その目だけでイケそうだ。
そのくらい興奮する。
「あっ、あぁっ」
「あぁ、もう……かわいいなぁ九蔵は……」
「ニューイ、もっと魂でシて……っはっ……中と、すげ、気持ちくて……っお、俺……っ」
九蔵のためを思って叱るニューイに、九蔵は自ら足を絡ませて尻を揺らした。
ニューイは一瞬目を丸くしたがすぐに困った顔をして頷き、唇にキスをする。
「フフ。キミは私を誘惑して、私が意地悪をしても誘いに乗って、その上まだ私を誑かそうと言うのかい?」
「ふぁ……っあぁ……っ」
「本当に、悪い子だ」
──悪い子だ、と。
ニューイに言われると、九蔵はとても、気持ちがよかった。なぜだろう。
たぶん、自分の全てを受け入れるニューイが自分の悪い部分を悪いと認めた上で愛してくれることが、気持ちいいのかもしれない。
(お、俺、変態じゃねぇの……?)
「九蔵、飲んでごらん?」
「んっ……ぁ、ふ……っ」
一瞬常識人が顔を出しかけたが、九蔵はゴクンと唾液ごと飲み込んだ。
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