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突然の女性口調に一人称の変更。
拳を握って高らかに熱く叫ぶドゥレドは完全にキャラが違う。
「はぁもうスイッチが入っちゃったワ」
「ドゥレドはどうして女性口調なんだい?」
「悪魔王様を思い出すとアタシの中のメスが湧くのよッ! そして湧いたからには語らないと気が済まないワ……ッ!」
「さっさと九蔵の舌と声を返しておくれ」
「話を聞きなさい!」
ツッコミどころが多すぎた。可及的速やかに声を返してくれ。それが叶わなければ地獄の幕開けだ。悪魔なんてみんな困ったさんしかいない。
九蔵は震えるが、ニューイはキレモードなので「九蔵の舌と声はまだかな」と特に動じず、ニコニコ笑った。
怖い。おそらく九蔵の舌と声を返すまでキレモードだろう。怖い。
そんな九蔵たちを前にスイッチが入ったらしいドゥレドは、自分がこうした経緯をつまびらかに語り始めた。
──ドゥレドは、父親である悪魔王にマジな恋をしている。
その心酔具合はアイドルもかくやで、信奉と言っても差し支えない。
好みのタイプは〝屈強なボディ〟。
そして〝物理的に強いこと〟。
そんなドゥレドにとって、一般的なサイズの悪魔や人間が小鳥ちゃんに見える巨体で誰よりも強い最強の悪魔王は、ドンピシャだったのだ。
好感度をあげるため意気揚々とアカデミーでいい成績を取り、人間の魂だって数え切れないほど食らった。
根っから悪魔らしい性根を惜しげもなく発揮し、同じく悪魔らしい幼馴染みのキューヌと王としてダークに生きる。
あわよくば報告の謁見やらで悪魔王との距離を縮めてやりたいとワンチャンスを狙いつつ戯れる、強かな日々。
そんなある日、ドゥレドは悪魔王がニューイを気にかけていることを知った。
どうやらもともと幼馴染み以外の悪魔とはつるまない虐められっ子の悪魔だが、突然音沙汰がなくなったらしい。
どこぞで人間を拾って館に引きこもり、統治職に従事する時以外は爪も出さない。悪魔城にも顔を出さない。
そんなニューイの話を、悪魔王はたびたびポロリと零す。
それは、変わり者でポンコツダメっ子なニューイはなにを考えているのやら、という心配や呆れを含んだ興味ではあったが、ドゥレドとしては面白くなかった。
どうでもよかったニューイを小憎たらしい馬の骨へ認識を改めるくらいには不満だ。
何度屋敷を殴り壊し、骨を粉に挽いてやろうかと思ったことか。
それでも実行に移さなかったのは、ニューイが王として仕事はしていたことと、悪魔王に従順だったからである。
しかし、最近聞いた悪魔王のボヤキは見過ごせるわけがなかった。
命令拒否? 極刑だ。
理由が人間? あり得ない。
そしてなにより──クリスマス・イブのパーティーで二人きりのトークタイムを満喫していたことには殺意しか湧かないだろう!
ドゥレドの原動力は主に嫉妬だ。
愛しの悪魔王に目をかけてもらえているくせに逆らい、こちらの世界にあまり寄り付かないニューイが憎らしい。
だってだって、羨まけしからん。
あんなほとんど骨の悪魔のどこが魅力的なのやら、理解できない。
自分は悪魔王とイチャコラできていないのに、目障りな劣等悪魔が恋しい人間のそばにいて、あまつさえ両想いであり、同棲生活なんて至福の時を過ごしている。
やはり殺意しか湧かない。
聖水で煮溶かしてやりたい。
そうして嫉妬の炎で活火山と化したドゥレドが練った計画が、ニューイの愛する人間──九蔵をさらうことだった。
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