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 悪魔様は勝手なことしか言わない。  好き勝手に人の体を考察するが……確かに九蔵がスケベだとしても、それは性癖なのではなく結果論だ。  こんなに夢中になってニューイのモノをしゃぶっているのは、ルージュのせい。  咥えきれない幹や陰嚢、内ももをなでて煽る蠱惑的な手つきは、ネイルのせい。 『モジモジと腿を擦り合わせて……九蔵はもう少し、強く突いてほしいのかい?』 「うむ。喉を鳴らしたから、正解だね」  正解、だけど違う。  欲しがっているのは、愛のせいだ。  長く弾力のあるトゲのような凶器である上に自在にうねる悪魔のモノを健気に尻で締めつけ、気持ちよくさせようとするのも、ニューイへのとめどない愛のせい。 『欲しがりな九蔵はとてもかわいい』 「息遣いすらかわいく見えてしまう」  ハッピーバレンタインの夜。  足りない愛の補填方法がセックスしか思いつかなかったお粗末な童貞人間だという、だけなのだ。本当に。  ──と、あとで我に返るだろう自分のために、全力で言い訳をしておこう。 『いやらしくて、いじらしい……』 「そんな九蔵を、愛しているよ」 「んふ……ぅ……っ」  やっぱりどこか冷静な九蔵は自分の本心に気づいてしまい、未来の自分に保険をかけてから、甘い言葉と体に溺れていった。  緩やかな抽挿が激しさを増し、ズプッ、ズプッ、とより強く抉られる圧迫感。  悪魔のニューイは心地よい肉穴の締めつけに長い尾をくねらせて感じ、冷たい肉棒を脈打たせて九蔵を求める。  唇のない口を大きく開き、紫の舌で噛みつくように九蔵の項をしゃぶる悪魔のニューイは、傍目に見るとスプラッタホラー寸前だ。  控えめに言ってゲテモノ。  イケメンとは程遠い。 『はっ……もう我慢できない……キミが好きすぎて頭蓋が割れそうである……』 「ン……! ンン……っ」 『悪魔の私に抱かれてくれるなんて、キミはどこまで私を許し続けるんだい? 明日浄化されてもいいくらい幸せだ……!』 (ガチの悪魔が、こんなに嬉しそうに俺にしがみついて……あ〜……うん。……バブい)  なのにそのリアル悪魔をカワイイと感じる自分に、九蔵は自分で呆れる。  間違いなく幸せなのは九蔵のほうだ。  悪魔のニューイが、筋肉がむき出しになったようなバケモノの手で腰を抱き、感動しながら九蔵の奥を激しく突き上げた。  ギッギッとベッドが軋み、九蔵の体が浮き上がって揺らぐ。 「あぁだけど、浄化されると九蔵と離れ離れになってしまう……それは嫌なのだ、絶対に嫌だぞっ。想像しただけで恐ろしくて、脳が変になりそうである……っ」 「は……っん、ふ……!」  その動きに合わせて、軽く膝立ちになった人間のニューイが九蔵の両頬を手で包み込み、恥骨を突き出すように律動した。  悪魔のニューイは頭蓋骨が割れそうだと嬉しがり、人間のニューイは脳が変になりそうだと泣きそうになっている。  アベコベニューイだ。  それもかわいい。  そこまで愛される根拠は思いつかないけれど、ニューイがとても自分を愛してくれていることはよくわかった。  かっこよくてかわいくて尊敬できる。  この悪魔のために、九蔵は二度と作りたくないと心底思った手作りバレンタインチョコを、きっと死にそうな顔をしながら毎年プレゼントできるだろう。 (好きだ、ニューイ……すげぇ好き……)  九蔵はニューイを見ていると溢れる唾液と蜜を混ぜてジュル、と啜り、喉を鳴らして飲み込んだ。

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