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「あっ……ぅ……」 『九蔵、痛みはないかい? 少し苦しいと思うが、慣れるまでの辛抱である。体が辛くなったら言っておくれ』 「擽らねぇで……ふっ……ニューイ……お願い……んっ……溶けそうなんだ、よ……」 『フフ。それは気持ちいい、だね。凄く悦さそうな顔をしているぞ? 一晩中見ていられるくらい色っぽくて、やめられない』 「ぁあ……っ」  捻じるようにかき混ぜられ、反り返った屹立からトロリと蜜が伝った。  脳内に直接響く悪魔ニューイの声からは逃れられず、羞恥が燃え盛り恥知らずにはとてもなれない九蔵。  しかし今の九蔵は、そればっかりに構ってもいられない。 「九蔵。体の具合が悪くないのなら、私にもバレンタインの甘さを貰えないかい? そろそろ我慢できなくなりそうだ」 「ふぁ……っあう……ん……っ」  自分だろうが九蔵の意識が反れたままだと寂しがるもう一匹の子犬は、九蔵の下顎をすくって口腔内を親指でなでた。  九蔵が挿入に慣れるまで律儀に待っていてくれた、人間ニューイ。  けれどもともと初めに咥えられていたこともあり、平気なフリをしていただけで焦れていたらしい。  悪いことをした。いやまあそもそもニューイが分離するから一人に集中できないのだが。わがままニューイめ。好きだ。 「ん……髪ゴムあって、よかったかもな……これ舐める時、前髪……邪魔だからさ」 「っ……!」  九蔵はボンヤリと熱に浮かされた頭でニューイに意地悪を言って、目前でそそり立つ一物にチュ、とキスをした。 「そ……その言い方だと、私がやらしいプレゼントをあげたみたいじゃないかな」  あげただろう。そのプレゼントでこの髪を手ずから括ったのもニューイだ。道具はなんでも使い方次第である。  九蔵はやましげに舌を伸ばし、幹に絡めながら視線を上へ流した。  ニューイのルビーの瞳に欲情の色を見つけて、ドクン、ドクン、と興奮した胸の赴くまま唇を添わせて吞み込んでいく。 「ん、ふ……ふっ……」  髪を括ると、色白の九蔵の顔に映える真っ赤なルージュがよく見えた。咥え込まれる様も淫蕩する瞳も、全てだ。  もちろん人間ニューイの股座に顔を埋めて艶めかしく奉仕する九蔵を背後から犯す悪魔ニューイにも、それはよく見える。  大人の男がベッドの上で悪魔と恋人に喉奥と腹の中を犯され、前後に揺さぶられ感じている奇妙な光景。  イケメンと悪魔様に挟まれているのが冴えない自分じゃ、残念な気すらした。  しかし九蔵が自分の煽情的な様に自信がなくとも、ルージュとネイルは容赦しない。  おかげで九蔵は、わざと見せつけるようにしゃぶってしまう。 「ン、ン……ンン……」 『うぅん……これはプレゼントがやらしいわけじゃなくて、九蔵がやらしいからに違いないな……』 「うぅん、違いないとも……ちょっと心配になるくらいである……」 『全くである……』 「ン……っ」  巨体を曲げて覗き込むように九蔵の感じ方を伺っていた悪魔ニューイのモノが、体内でドクン、と盛った。  前から後ろから心配そうに顔を覗き込む恋人たちに抱かれながら、九蔵は耳まで赤くなって二人から目を逸らす。  酷い言いようだ。  そう幼児を見るような顔で心配しなくても、こんなことはニューイ以外には天地がひっくり返ってもしない。 「しかし、分離するまで気づかなかったのだ」 『九蔵はこうして私に抱かれながら私のこれを咥えると、食いちぎられそうなくらい絡みつく』 「ンぁ……っ」 (違う、全然違うって……っ)  カァァァ……っ、と切なげに紅潮する九蔵は、頭の中で必死に首を横に振った。

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