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第六.五話 おとぎ話・ハリボテ王子と縁の下のお姫様feat.甘えん坊名探偵with愉快な悪魔様
こちらニューイ。
こちらニューイ。
ツノ骸骨種の成人男性悪魔兼プレイバックマウス専属ネットモデル兼、個々残 九蔵にベタ惚れな恋人である。
本日のニューイは、先日のバレンタインにて九蔵が言っていた言葉たちについて、深々と考えていた。
曰く、こう。
『俺、ニューイを不幸にしてる気が、するんだ』
『誰かの恋人になったのが、初めてだから……下手くそだろ? 愛情表現……』
「…………?」
ハテナである。
あの時はニューイ的に心底クエスチョンマークが脳内乱舞したが、九蔵はドシリアスモードだったのでなにも言わなかっただけだ。
人間生活が壊滅的な悪魔様の自覚があるとはいえ、たまには空気を読む。
それに言っておくが、レンジでチンも余裕のよっくんイカなのだ。
ニューイは静かに胸を張った。
インスタントコーヒーは量が不明でまだたまに分量をミスするが、粉の量が決まっている袋スープは問題ない。
ゴミ出しはお手の物。
なんせ、玄関に置いてあるゴミ袋を持っていくだけ。ちょろいものだ。
缶もビンもペットボトルも同じく。
料理はできないが、トーストすることと、ご飯をお茶碗に盛ることはできる。
洗い物は、洗うと手が滑るのでたまに破壊する上に昔は洗い残しすすぎ残しがある時もあるが、今はさほどでもない。洗った食器を拭くことは問題なくできた。
洗濯物も、畳めやしないが回して干して取り込むまでだけなら慣れだ。
なんせ九蔵がこっそり色物と白モノ、ネットインや洗濯不可など細かくわけてくれるのだから、ミスなく回す。
優しい。九蔵は優しい。
九蔵の優しさにもムンッと胸を張る。
九蔵は「ニューイのモデル服ばっかだから、子犬には難易度が……オシャレ着洗剤なんか初めて買いましたよ俺さん……」と呟いていたが、よくわからないニューイだった。
オシャレ着洗いとはなんだろう。
オシャレ、魅力的な服だろうか。なら九蔵の着る服はみんなオシャレ着である。
閑話休題。
兎にも角にも、問題ないのだ。
九蔵は十分ニューイに尽くしてくれているし、ニューイも多少進歩している。
ラブラブ同棲生活(何れ新婚生活にするのが夢だ)は幸せだ。
「──なのになぜ私が不幸だと言うのやら……九蔵は私に不公平だと、自分の愛が足りていないと言うのだよ」
「ふむ……ココさんの根拠の無い自信喪失を補填することはできるスよ」
「なんと!」
渋面で腕を組むニューイの前でズズ、とお茶を飲んだ澄央は、真顔で親指を立てた。
流石頼りになる盟友である。
個々残家のお茶菓子備蓄を全て食い荒らした後とは思えない頼もしさだ。
春休みが長すぎて、暇らしい。
大学の友人たちとも遊び尽くしアルバイトもマックスまで入れた澄央は、積んでいたBLゲーム、乙女ゲームを処理しきって心底時間を持て余していた。
九蔵と違ってフットワークが軽くスタミナもあり、顔見知りなら多い澄央。
行動力の権化なので、やりたいことはなにがなんでもやり尽くす。
行き着く先は、いつもインドアウェルカム九蔵さんのお宅であった。
「おーし、まず調査開始ス」
そんな澄央はトートバッグからノートを取り出し、ちゃぶ台に開く。
「ノリノリだね、真木茄 澄央」
「こういうの好きッス。刑事、警察って体格制服とどちゃくそエロいスから、割と推理モノ見るんスよ」
ニューイは九蔵のほうがエッチだと思ったが、口には出さなかった。成長だ。
飼い主の躾の賜物とも言う。
「なら私たちは名探偵か。九蔵の迷子になった自己肯定感を取り戻そう!」
「ッス。じゃあさっきの話を聞いてて思ったんスけど、ニューイの担当家事は?」
「? えーっと……」
澄央の質問に首を傾げつつ、ニューイは指折り自分の家事を並べる。
「朝食と、ゴミ出し。センタクキを回して干すだろう? 洗い物を拭いてしまう。たまに洗う。玄関掃除もするぞ! ご近所さんともお話する!」
「ふむ」
「掃除機はコードレスを買ったのでチャレンジしているが、掃除もさることながら、こう、パカッとするのが難しくて……ゴミをばら撒くのだ。だがおおむねスムーズ」
「ふむふむ」
「ムフフ、お湯を入れる前に浴槽掃除もする。フタも洗う! 月に一度のお風呂場掃除もなかなかのものだぞ」
「なるほど」
澄央はカリ、とノートに書き記し、チラリとニューイを見た。
「ちなみに収入は」
「このくらいである」
「ふーむ。ココさんはシフトの入り具合から平均するとこのくらいなので、並べて見るに労働の負担は……」
スッ、と顔を上げる澄央。
ニューイはゴクリと唾を飲んだ。
聞き取り調査でいったいどんな事実がわかったというのだ? 名探偵エッグプラント。もとい真木茄 澄央。あだ名はナス。
「ココさん、七割近く負担してるス」
「不公平じゃないかッッ!!」
ニューイはガンッ! と額をちゃぶ台に打ち付け、ちゃぶ台にヒビを入れた。
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