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ニューイはめそめそと涙目になりつつも、指を鳴らしてちゃぶ台を修復する。
というか、七割生活のアレコレを負担していてなぜ九蔵は自分の愛が足りてないなどと言っていたのやら。
新種のおイカレさんか?
おイカレさんでも愛しい。
が、超甘やかし悪魔を超えるくらい九蔵が自分を愛してくれていると知りグゥの音もでないニューイは、ボフッ! とスムーズに悪魔化してしまった。
「ビジュアル怖すぎ問題」
『真木茄 澄央〜……っ! この悪魔スタイルですら、あの臆病者の九蔵が最早オーケーの顔をしていたのだよ〜……っ!』
「マ?」
『うぅ……マなのだ……仕方ないなぁという顔をして実際抱かれてくれたぞ……』
「ふーむ。それはたぶんニューイがう〇こになっても別れないレベルでベタ惚れされてるスね。どう考えても溺愛ス」
『隠れて愛さないでほしいのだが!?』
汚物化しても変わらぬ愛とは。
澄央は「つかココさん、悪魔とヤったんスか? 男気がガチッス。バリタチの俺でも悪魔を抱けるかどうか……!」と別の視点で九蔵に尊敬の念を抱いていた。
この場に九蔵がいれば、真っ赤も真っ青も通り越して真っ白になっていただろう。
もうどこからツッコミを入れていいのかわからず裸足で逃げ出す有り様だが、ここに常識人の九蔵はいないのである。
『いやちょっと……セミダブルベッドの代金は嫌々折半したはずで、私と九蔵はお互いに協力的な考えを持っているというのに……そ、そこまで格差が出るものなのか……?』
ニューイは頭蓋骨を抱えた。
家事は様になったと思っていたのだ。モデルの仕事も、撮影がない時はデザイナーたちの試着の相手やズーズィの助手をする。
ニューイも週に五日は仕事をして、家事も毎日なにかはこなす生活。
自分ではなかなか人間生活がうまくなったと、心底思っていた。
──それがまさか、あの器用な恋人にまんまとフォローされていたなんてっ!
『あぁ九蔵……! 金の延べ棒は使わなければ意味がないのだよ!』
「あ、生活費はそんな大差ねぇスよ? ってかむしろニューイの収入がデカいスね。ニューイはほぼ丸ごと貢いでるスけど、ココさんは貯金と趣味費に使ってるんで」
『むっ? それならどこで大差が……』
「主に家事ス」
『時代は分担である──ッ!』
ピコンと指を立てた澄央に、ニューイは手をワキワキとさせて震えた。
一人暮らしをしている澄央曰く、家事とは掃除洗濯炊事のみではないらしい。
一つ一つは時間も手間もかからないが、細かく出すと数は多い。
澄央はめんどくさくてそれらをほぼ放棄しているのだが、九蔵が遊びに来た時、コソコソと片付けてくれるのだと言う。
そして絶対に。
絶ッ対に、澄央の前ではしない。
掃除洗濯とサポートしていることがバレると死ぬタイプのなんかもうそういう妖精さんなのが、個々残 九蔵である。
『シャイを拗らせた結果がこれか……』
覚えがあるので、ニューイはうむむと顎に手を当てて納得した。
オタクを拗らせ、ムシになる。
シャイを拗らせ、妖精になる。
「まぁ一人暮らしの時からそうしてるとこはあると思うスよ? ココさんちのトイレにサボったリングがあるの見たことねーッス」
「うむ。九蔵はキレイ好きだね」
ニューイはボフンッ、と姿を人間に戻して澄央の話に感心した。
確かに、この部屋もいつも綺麗だ。
インドアで怠惰な九蔵はよく気がつく上に、効率厨である。
ちなみにニューイは知らないが、事実九蔵はニューイがいない時を狙って日に一つ程度、どこかしらをしっかりと掃除していた。
平日は軽いもの。
トイレ掃除。風呂掃除。キッチン掃除。部屋のホコリ取り。洗面所掃除。一つにつき三十分以内。これで月から金。
休日は部屋全体の掃除機かけ。
一週間分の買い出しもする。これらはニューイも知っていた。
あと一日の休日は一切ダラけるが、ベッドのコロコロは日頃からマメにかける。
これが個々残さんちの九蔵くん。ほぼ誰とも外出予定がなく時間のありあまる、元・一人暮らし男の侘しいルーティンだ。
ちなみにご近所付き合いはない。
自治体全体の掃除にも無言で出席して無言で帰るので、人付き合いの時間は皆無である。いいところばかりではなかった。
閑話休題。
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