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 たっぷりのゲルに助けられた怒張は皮膚を裂くことなく、スムーズ過ぎるほど楽に、全てが九蔵の中へ呑み込まれている。  それをぐぽぐぽと繰り返されると、ワインよりも気持ちよく酔えるのだ。 「はっ……」 「あ……はぁ…あ……っ」  酔いどれた九蔵の中に、ニューイが一度吐き出す。  ドク、ドク、と迸る精が九蔵の中の湯に受け止められて混ざり、内臓を汚すことなく滞っては硬さを保つ怒張に潰された。  当然ながら一度じゃ止まらない。  しっかりと抱え直されると抜ける寸前までズルリと退かれ、ひと息に根元までをズブンと押し込まれる。  ──残念ながら九蔵はもうずっとマトモじゃないので、このあとの記憶は鮮明ではなかった。  とりあえずはシンプルに抱かれ続けていたと思う。  バスタブの中はそう広くないので、ニューイに強く抱きしめられながら突かれるとあちこちさり気にぶつけている。  しかし気持ちはいい。  深い。気持ちいい。  苦しい。気持ちいい。  熱さとダルさも、全て気持ちいい。  言葉は一切ない。  お互いの荒い呼吸とタガと我慢と羞恥のバグッた九蔵の甘えた鳴き声が、湯の揺れる音や結合部の粘着音、破裂音と反響した。  そのうちニューイが少し余裕を取り戻すと、デロデロとへばった九蔵を嬉々として可愛がり始める。  酷い話だが、出させてくれない。  出せなければ欲望が消えないのだ。  湯がうねり、中を縦横無尽に蠢いた。  その湯の塊で栓をして、ニューイは九蔵をベッドに運び、改まって犯す。  トレーニングを始めても、以前よりは肉感の増したカラダ。  月明かりの下でそれを観察しながら触り、揉み、ニコニコと嬉しそうに指摘してはからかい混じりにニューイは抱く。  もう一つ酷い話をするなら、九蔵も酔っているので〝気持ちいいからもっとシてくれ〟とねだったことか。  アハハウフフとじゃれ合いながら、いつの間にやら裸で抱き合っていた。  お前が悪いいやお前が悪いと罪のなすりつけあいは当たり前で、結局は好きだ好きだで落ち着き、またキスから始めてベッドを軋ませる。  議論が決裂していた期間を埋めるように、長く長く交わる。  相当飲んでいたニューイは最後まで酔いが冷めていなかったものの、九蔵は少し、どこかのシーンから思考を取り戻していた。  ──酒を飲んで、セックスをして。  まぁなかなかにだらしない夜だと思うが、九蔵は指先ひとつ抗えない。  手も足もダラリと投げ出し、されるがままだ。全身を脱力させ、熱く溶け落ちる肉塊になったように抱かれる。  まだ酔っ払っているせいだろう。  弾けそうな膨満感がむしろ心地いい。  強く強く腕の中で閉じ込められながら抱かれると、自分の中がみんなニューイでいっぱいになっている気がする。  一応、大人な自分たち。  やはりどこか、素直になりきれない。  となると一度ブレると拗れるので、今後も意見交換会は積極的に行っていこう。 「九蔵。酔った勢いと浮かれた気分に任せて、ほんの少しだけ言うと、さ」 「ん……ふ……」 「こんな、多少だらしない程度じゃ、俺は全然足りねーよ」 「もっと育てて、豚にしてーな」  ──そうしたら誰も欲しがらないし、私がいないとなにもできなくなるだろう?  素直に、純粋に。  ただポンコツな自分に自信がないことと、九蔵が少したるんだくらいじゃ屁でもないということと、堕落してくれたほうが安心するんだということ。  それをまとめて、このセリフ。  子どものような笑顔でそう言った悪魔様な恋人に、九蔵はニヘラと同じく笑顔で「デリカシー?」と返した。  意見交換会は、大事である。

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