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 クチュリと水音が響いては脳が痺れて、耳の穴からチュクチュクと快楽の気配に犯されていく。 「ん……ぅ…ん……」  キスが好きだ。  ニューイの唇が好き。ずっとしゃぶりあっていたいくらいには。  まぶたを開くとルビーの瞳に炙られることは熟知しているので閉じたまま、九蔵は手を伸ばし、ニューイのバスローブの中へ控えめにペトリと触れる。 「っ、……んん」  ピクンッ、とニューイの体が跳ねた。  まんまと煽られてくれたらしい。  九蔵の肌を愛撫していたニューイの両手がバラバラと動き、浮いたあばら骨をくすぐったく引っ掻いてはコツコツトントンと叩く。  脇腹、腰、へそのくぼみとなぞって位置が下がると、骨盤のでっぱりを親指で丸めて、九蔵が身をくねらせる様を笑う。 「ふふ」 「ンッ……ぁ、……ッ」  そのうちに茂みと下腹部の境目を手のひらでザリザリと焦れったくなでられ、九蔵は無意識にクンッと腰が仰け反った。  ……焦らし王子め。  いきなり襲ってもなぁなぁで許すレベルなのにわざわざ反応を楽しむな。  九蔵はちゅっと滑らかな唇に吸いついてから首をひねり、混ざりあった生ぬるい溶液をコクンと飲み干した。 「はっ……の、バカ。なんでいつも、久しぶりだと焦らすんだよ」 「う。それは九蔵が私に触るから隙あらば九蔵からオネダリさせたいな、と」 「言っとくけどどっかの悪魔様が羞恥プレイ大好きなせいで、ストレートに強請るくらいならもうあんま恥ずかしくねぇからな?」  ジト目で責めつつ、ツツ……と伝う糸ごと自分の濡れた唇を、赤い舌でペロリと艶かしく舐める。  途端、触れたニューイの胸元から伝わる鼓動がギクリと激しくなった。  こんな冴えない男の挙動でムラムラするとは相変わらず物好きな悪魔である。……いやまぁ嬉しくないとは言っていないが。  多少のオネダリに慣れても、こういうことはノーコメントだ。 「ほら、さっさとお好きなように犯し遊ばせてくださいませ」 「了解である。しかし恥じらう九蔵はかわいかったのだが、堂々と言われるのも男らしくてこれはこれでかわいい……」 「そこはカッコイイと言いなさい」 「お? ふふ」  一応彼氏なんだぞ。  そう言いながら九蔵はフイとそっぽを向き、恥ずかし紛れにスリスリとニューイの乳首を弄った。  スキンシップ好きのニューイは触られ慣れているので、いじけて彼氏の胸を触るなんてかわいいな〜とばかりに喜んでいる。  どこからともなく悪魔印のローションを取り出しニッチャニッチャと手の中で揉む、余裕のニューイ。ちょっと悔しい。 「つか普通に俺ばっか感じさせてもらうのも申し訳なさある、し、俺さんも男です……俺さんも男なのです……」 「? 申し訳なさとは」 「いや別に。お前さんの性感帯はどこですかねって話」 「私の性感帯かい? そりゃあもちろん下半身のアレ周辺さ。あとは匂いかな」 「匂い?」 「うむ。体臭、人間のフェロモンに魂と欲望の匂いが混じってとても美味しそうに感じる……ので九蔵、シャワーを浴びるなんて酷いである……!」 「ぅひっ」  答えると同時に手のひらで温めたローションをヌルンと尻の割れ目へ塗りつけられ、九蔵は反射的に身をよじった。  なにが酷いもんか。  汗と男にまみれた匂いをパーフェクトイケメン王子彼氏に嗅がれた日は、ただの九蔵の命日である。  しかし横向きにねじれる九蔵の左足をグイッと抱えたニューイは、九蔵の言い分など聞きやしない。

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