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組んだ九蔵の肩を離そうともしない。
ニューイをカッコイイと言われてつい強く頷いた九蔵に引けを取らないどころか超える勢いで語る凌馬。顔がいい。
煌めくイケメンが楽しそうに語る姿を至近距離で見つめると緊張で冷や汗と赤面と震えが止まらない九蔵だが、それすら凌馬は気にならないほどニューイ語りに夢中だ。
「そんでファッションモデル業務しかしてねぇし日帰り撮影しかしねぇから、ニューイさんはマネージャーいらねって社長が言ってたんだよな」
「あれ、直接聞いたんですか?」
「くくくっ、や~! 聞いたね! ニューイさんの予定知りたくてさ。あの人は凄いぜ? 理由は内緒だけど、俺あの人のことマジでリスペクトしてんだ」
「ん!? あ、あの棗 凌馬が……!?」
「この棗 凌馬が! くくっ」
やはり、思った通り。凌馬の中のニューイの株が、なぜか高かったのだ。
理由が明かされ九蔵は目を丸める。
目ざとい九蔵から見ても嘘偽りを感じない明るい笑顔と態度から、凌馬が本気なのだとすぐにわかった。
まさか本物のトップアイドルが悪魔のニューイをリスペクトしているなんて。
恋人としてはちょっと、結構、割と、盛大に。かなーり誇らしい。
オタクな九蔵の気持ちとしては同担を見つけた気分だ。今すぐよっしゃーのポーズをしたい。
「はぁー……俺としては棗さんって既に相当カッコイイんですけど、それでも誰かに憧れたりするんですね」
「ぷっ、そりゃするよ! どんだけ俺のことすげぇ人だと思ってんだ? くく、なぁ、九蔵って呼んでいい?」
「ぅおっ、お、あ、はい。大丈夫です」
「じゃあたぶん俺のが年上だけど、俺も凌馬でいいぜ。かつタメ口」
「あ、あー。ありがとうござ、あ、いや。ありがとう、凌馬」
「おう!」
ニューイを好かれて嬉しい気分に釣られて張っていた気がやや抜け、九蔵はふっと軽く笑った。
凌馬も嬉し気にククッと喉を鳴らす。
よかった。彼とは気が合いそうだ。
それにとても、いい人だ。
「そんで九蔵」
「ん?」
「いきなりこんな有名企業の専属モデルにつけられるって、やっぱニューイさんと特別な関係ってことか? それともそんなツテがあるようななにかしらが……」
「──九蔵っ!」
凌馬が言い終わるより先に、ふと背後から喜色満面に咲き誇った声が聞こえて、九蔵はそちらを振り返った。
今度やってきたのはもちろん愛しの悪魔様、ニューイであった。
撮影写真の確認を終えたらしい。
ニューイの登場に凌馬の顔はパァッ! とわかりやすく輝く。
心なしか髪を乱してやってきたニューイは、凌馬に抱かれる九蔵の手をするりと握ってニコリと笑う。
「九蔵、待たせたね。リョーマと楽しそうになんの話をしていたんだい?」
「はいお疲れ様。今ちょうどお前の」
「ニューイさん! お疲れ様です! 俺今日も早めに来てずっと見てたんスよ〜!」
「おっと」
ニューイの質問に答えようとした九蔵を遮り、九蔵の肩から腕をほどいた凌馬が、九蔵にした時と同じようにニューイの肩へガバッ! と腕を回した。
凌馬は高身長だがニューイは更に高い。
やや前かがみになるニューイを捕まえて、凌馬は興奮気味に話す。
九蔵はつま先をキュッと丸めた。
しかしこれは日常なのか、ニューイも嫌がる様子はなく笑顔で肩を組み返す。
なんだと? 日常的にこのイケメンたちは仲良しなのか?
なんてことはないのだが、九蔵は靴の中で丸めたつま先をモジモジさせた。
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