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「リョーマ、お疲れ様! 今日もキミに見られていたのかい? それなら途中で笑えるポーズの一つでも撮ればよかったな。毎日私の撮影を見ていると飽きるだろう?」
「ははっ、飽きねぇですよ! てかニューイさんが変なポーズとかしたら俺もスけど監督が爆笑しますから」
「むむっ、なら次の撮影で一緒にベストショットを撮ろうじゃないか。リョーマとうちのコラボ企画。服もだが、読者はキミの新たな一面を見たがっていると思わないかい?」
「ぷっ、新たな一面が変なポーズなんスか? スーパーアイドルとド美形モデルの愉快なツーショット?」
「煽り文句はこうさ。〝シーンを選ばずクールに着こなせる〟リョーマプロデュースブランド! 変顔変ポーズ!」
「それ最早炎上商法ッス!」
熟れたジョークを交えて、実に楽しそうに語り合う二人。
つま先をもじつかせる九蔵は少し驚く。
ニューイは凌馬に肩を組まれても握った九蔵の手を離していない。これは驚かなかった。いつものことだ。
凌馬だ。テレビで見るイメージと同じく快活な笑顔だが、アンテナいっぱいニューイへ向けている気がする。
そんなにニューイが好きなのだろうか?
それもそうか。ニューイは世界一のイケメンで最高の男だ。気持ちはわかる。
メンクイからニューイ単推しになりつつあるオタクな九蔵は、ウンウン頷く。
しかし人生においてニューイ単推しになってしまった彼氏の九蔵は、我慢できず、きゅっとささやかにニューイの手を握り返した。
「ん? ムフフ」
「っと」
ほんの少しの俺のものアピール。
すぐに気づいたニューイに九蔵の手はキュッと握り返され、凌馬から解放された九蔵の肩を今度はニューイの大きな手のひらが掴み、軽く身を寄せられた。
ニューイの肩から凌馬の手が離れる。
「リョーマ、紹介しよう。このキュートでチャーミングな人が私の恋人の個々残 九蔵だよ」
「げっ」
「は? お〜マジでか!」
ニューイがニコニコとそう言うと、凌馬はポカンと驚き、一瞬表情をなくした気がした。すぐに笑顔になったのでたぶん気のせいだろう。
それよりまたしても装飾過多な紹介で、周囲の視線が気になる九蔵だ。
みだりにひっつかないと約束したので比較的大人しく落ち着いているように見えるニューイだが、九蔵にはわかる。
コイツ、我慢している。
本当は肩を抱くより横抱きにでもして大声で宣伝したい。
凌馬の前でデレッデレにデレ散らかし、九蔵の自慢話をしたいのだ。なんせ手がプルプルと震えているからな!
九蔵が脳内メモ帳のご褒美欄に正の字を書き足していると、凌馬は笑顔のまま、ニューイに視線をやった。
「恋人っていいスね! でもニューイさんってゲイだったんスか?」
「! 聞いてくれるかい? いや実は元々女性にしか興奮しなかったのだが九蔵と出会ってね。バイセクシャルを開花させたのだ」
「お、そうなんですか。てかここで言うってことは会社に公表してるんですか? そういうの隠す人多いと思うけど」
「? 特に公表はしていないが、隠す気は毛頭ないのだよ。というか、なぜ隠さなければならないんだい? 私と九蔵はラブラブなのだよ?」
「あ〜……そりゃ、モデルっつー人前に出る職業ッスからね! イメージが大事でしょ? 憧れを売ってる俺らは、恋人できたらファンが離れていくこともありますし」
「う〜ん、そうか。確かに。だが私は恋愛脳というやつらしくてね。九蔵を愛する私がありのままのニューイだから、ファンがいるのなら九蔵への愛ごと私を好きになってもらいたいと思うのだ」
「おぉ……なるほど……スゲ〜」
凌馬は腕を組み、心底感心してニューイを見つめた。
九蔵も内心同意した。
凄い。わかる。ニューイは自分の心に誰よりも素直だ。
自分の心を偽ると骨がみんな壊れてしまいそうなくらいカタカタ震えて、泣き出してしまう。
ソースは告白騒動。今思い出せば笑い話である。いや、当時は本気だったのだぞ?
今はハッピーエンドだ。
九蔵はイチルを愛したニューイを愛しているし、ニューイはイチルだった別人の九蔵を愛している。
「それにそもそも、私に対してその心配は無用だよ」
凌馬と九蔵がほほほう、と感心していると、そう言ったニューイは指を一本立ててあっけらかんと笑った。
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