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髪型を変えるのとはわけが違う。
そういう意味で、意思一つではコントロールできない部分が存在の仕組みなのかもしれない。
人間の感情が面倒で複雑なように。
悪魔の主食が欲望や魂であるように。
まぁ、そういう生き物ということだ。
わかっていれば多少そのつど揉めはするものの、どこかで「言ってもコイツは俺と違う生き物だからなぁ」と折れどころができる。
他人はたいていそういうものだろう。たぶん。人類は全員別人にて。俺か俺以外か。名言だ。
「やっと洗濯がまともにできるようになったのは一応全力の成長なんよ……服に金をかけない俺の少ない服がまだらになってシワクチャになって……」
「悪気がないのが質が悪いと怒られしょげてでもでもだってと言い訳をし……」
「悪気ないなら許さねばなら俺のメンタルが崩壊するわと仁王立ちからの、悪いと思ってるなら言い訳すんなとヒョロガリチョップ……」
「泣きじゃくって私が悪かったからもう許してくれと話し合いから逃げた結果」
「ドクロ頭をぶん投げる、と」
「夜勤明けの九蔵は無敵である」
「使わない頭は不要ですから」
「キミは我慢の限界を超えるとプッツンするからね。意見交換会の重要さが際立つエピソードなのだよ」
「そらそうだ。どっちが悪いとかいう話ははなっからしてねぇのに『自分が悪かったです!』とか言い出した輩が全く理解してねぇし改善しねぇし、どこが悪かったとかなにが言いたいのかとかこっちを理解しようとしない。逃走。質問すらしてこず。アナタが悪いっつー話はしてないんですよこういうことが嫌だから改善できますか? できないなら話し合いできますか? って言ってるんですよ話の本質をこっちはダイレクトに説明してんだから理解してね理解する努力をしてねする気ないなら俺のこと嫌いか舐めてるよね社会人ならクソですよははははは」
「九蔵、九蔵。また昔の職場の話を思い出しているのかい?」
「ハッ!」
「しゃちくの闇は根深いである……なんでもいーよと許してくれる人ほど嫌だと言う時は向き合うべき見本さ。私は洗い物とゴミ出しもそつなくこなせるようになったぞ!」
「そうですね。意見交換会に積極的なニューイさんは最高ですはい」
「シャイながら適宜褒めることを忘れない私のお姫様は最高である」
「おっふ」
満面の笑みで親指を立て秒速でロマンスを返してくるニューイに、真顔でワンショットキルを食らう九蔵。
相手が自分じゃないからこそニューイはこういうつもりで九蔵はこういうつもりだと、あれこれ乗り越え交際二年目に突入する今、二人はいちいち細々 言い合うようになった。
おかげで日常のちょっとした意見交換会が捗る人間と悪魔のカップルなのだ。
と言っても、それは九蔵とニューイが恋人同士でお互いがお互いを愛しているので、なるべく長く一緒にいようとお互いが各々考えて歩み寄っているからである。
片想いはその限りではないだろう。
両想いでよかった。
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