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「いいスか? 今後二度と俺のスマホのアプリを勝手にアンインストールしないと誓うス。俺がゲームしちゃダメなまっとうな理由なんかこの世に存在しねぇス」 「で、でも」 「でももだってもヘチマもねぇ」 「クックック……」  いつもの薄ら笑いを浮かべつつも完全にしょもりーんと眉をヘタらせて哀愁を漂わせるビルティに、フンと鼻を鳴らす澄央。  へちゃむくれた敗北者ことビルティが「ナス、ナス」と両手を振ってアピールした。 「ん? なんスか?」 「じゃあオレなにはいい? ナスひとりじめしたい。なのにダメ言う。とぐろ閉じ込めたいぜ。ダメ言うなら、いつはいい?」 「ん〜……俺にヤキモチを理由になにかを強いるなら、惚れさせてからしかダメスね。まぁそれでも消すとか嫌なもんは嫌スけど、恋人の前じゃノーゲーム頑張るス。ゲームしたい欲より優先するス」 「うん、うんうん」  ピコンと親指を立てて説明する澄央に、ビルティはコクコクと頷く。  九蔵はホッと息を吐く。  よしよし。一時はどうなることかと思ったが、ちゃんと円満解決だ。  澄央の顔はもう怒っていなかった。  いつも通りのヤンキーフェイスだ。  澄央はいきなり怒りTPO丸無視で文句を言う男だが、終わりと決めると引きずらない。コロッとどうでもよくなる。  そろそろ収まらなければ、空気に徹する隣の悪魔様がひとりでに泣くところだっただろう。  なぜなにも悪いことをしていないニューイが泣くのやら。  どうせいっとき昼ドラを見すぎていたせいで痴情のもつれに怯えているに違いない。 (もうこういう主張の殴り合いは、俺たちには無縁の話なんだろうしな〜……)  小言を言い合い泣き言を言い合いプライドをさらけ出して秘密をひけらかしてきた思い出をなぞり、一人懐かしむ。  澄央はメシにありついて文句を言い散らかしたし、ビルティの不満も澄央のアンサーで解消したのでもう問題はない。  青くなってカラカラ震えていたニューイもパァ……! と発光し、人間スタイルに戻って友人たちのハッピーエンドを祝福した。  ハイパーイケメンのおかえりだ。  九蔵は自分にぴとっとくっついていたニューイの肩をトンと肩でついて歓迎する。  ニューイも肩をトンとして嬉しそうにデレ〜っと頬を弛めた──が。  このままぽわ〜んと簡単に平穏な日常を取り戻せるわけがないからこそ、個々残 九蔵は個々残 九蔵なのである。 「うんうん、わかった。趣味口出すは、惚れさせてからならオーケー。だから黒ウサギオーケー。理解。オレ頑張る」 『!?』 「ん? 黒ウサギオーケー?」 『ビっビビっビルティっ!?』  ふとしたビルティの呟きの直後、戻ったはずのニューイが、どういうわけかガチィンッ! と骸骨化した。  しかもやたら慌てている。  もちろん九蔵はキョトン、だ。  なんだなんだ? なにもおかしなことは言っていないじゃないか。  疑問符を乱舞させる九蔵が首を傾げてビルティを見つめると、ビルティはあっけらかんとした語調で真実を明かす。 「黒ウサギ、前にアリスのゲーム壊すしたぜ? クローゼットコレクション」 「ほう。続けて?」 『あ゛〜〜〜〜っ!』  スン、と真顔で顎に手を当てた九蔵の反応に、慌てふためくニューイが絶望の悲鳴をあげて頭蓋骨をポーン! と飛ばした。  この期に及んで隠し事か。  はっはっは。いい度胸じゃないか。

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