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「うん。オレ遊びに行くしたら、黒ウサギクローゼットかくれんぼ。んで、アリスコレクションうっかり半分」 「ふぅん?」 『ビ、ビルティ!』 「呪いで直すしたけど、データダメだぜ。黒ウサギ破壊と再生の悪魔。データ管轄外。物だけ。直すしたら、新品なるは仕方ないね」 『ビルティそれ以上はぁ……っ!』 「ニューイ。お口チャック」 『むぎゃっ……!』 「? 黒ウサギ、慌てるない。アリス黒ウサギ惚れてるよ。だから殿堂入りゾーンのゲーム壊すしても許すする思う」 「へぇ、ああ、そう……よりにもよってそこのデータ飛ばしたのか……俺が遊び尽くしたコレクションこと、全収集要素ミニゲームメイン全クリ全キャラ攻略済みゲーム棚のブツにね……くくっ……そっかぁ……」 『むっ、む〜っ! む〜っ!』  ──そこにだけは触るなって、口を酸っぱくしてガチトーンで言い続けてきたはずなんだけどなぁ〜……?  お口にチャックをつけたまま青ざめ半ベソをかくニューイに、九蔵はニタァ〜っとマッドな研究者キャラと名高い笑みを浮かべた。  不思議がるビルティを、全てを悟った澄央がコソコソと九蔵から遠ざける。  が、そんなことはどうでもよかった。  用があるのは目の前で縮こまって震えるポンコツドジっ子悪魔のみである。事情があろうが知ったこっちゃない。  壊した? 消えた? 魂のコレクションが? ラブイズデータが?  殿堂入りゾーン。  それはイケメンを愛するゲーマーの九蔵が徹底的に遊び尽くしたゲームを並べてオタク心を満たす神聖な祭壇。  愛したカレとの思い出は、全てメモリーに刻まれている。  攻略すれば用済みなわけではない。  関わった全ゲームクリエイターに感謝し崇め奉り大事に保管していつでも思い出しては悶絶し尽くすことができる、言わばイケメンの宝庫。前世の恋人。今も愛しい恋人。  オタクにとって一度推したキャラクターは、生涯推し。  つまりどういうことかと言うと、だ。  どんな経緯か知らないが、もう二度と戻らない唯一無二のデータを消してあまつさえ隠蔽していたニューイは、殺人者にも等しい悪魔ということで。  要するに、推しの|敵《かたき》ということで。 「……ニュ〜〜ウ〜〜イ〜〜ッッ??」 『ム、ムギュゥッ……!!』  ──カーンッ! とゴングが鳴り響き、平和が戻ったはずのアパートの一室が燃え盛る地獄のリングと化した。  泣きじゃくって丸くなる悪魔。  闇堕ち顔で怒り狂う人間。  それを哀れみたっぷりで見守る友人と、その友人に目を塞がれて全然よくわかっていないがまぁいいかとニヤケるトカゲ。 「なぁちょっと人のコレクション勝手に弄った上に壊してデータ消滅とか意味わかんねぇんだけどなにしてんだよコラしかも隠蔽するってどういうことだよオイどれを消したお前どれでも許さんけどどれを消したそしてその代償にお前さんのなにを消してやりましょうかねぇははははははは」 『ごごごごごめんなさいごめんなさいごめんなさいであるぅぅぅぅぅぅっ!!』 「ニューイ、アーメンス」 「アーメン黒ウサギ」 『嫌だあぁぁ祓われたくないぃぃぃっ!』  痴話喧嘩? いいえ本気の殺意です。  九蔵、激怒の俳句。  縮こまる翼を毟ってマルハゲにしそうな勢いの九蔵と謝罪と言い訳を必死に並び立てるニューイの姿には、交際一年以上の余裕など皆無なのであった。

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