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 メンタルダメージを負った夜勤明けともなると、全媒体からイケメンを収集して英気を養わざるを得ない。  故に現在推しているイケメンを順に摂取していた九蔵は、やはり締めに永年チャンピオンを摂取する。 「ニューイさーん……」 「なんだい? 九蔵」 「ん〜……ニューイニューイニューン……」 「にゅーん」 「んん〜……ニュイ」 「にゅん!」 「んへぁ」  なんだその鳴き声。かわいいか。  ベッドのふちから顔だけをひょこりと覗かせてニコニコしているニューイの鳴き声に、九蔵は潰れた相槌を打った。  顔には出ないが脳内はバラ色。  むしろお花畑。いや遊園地だ。夜明け前はあんなに怒りを燻らせていたくせに。  ニューイの顔を見ると許してしまう。  ……イケメンだからではなくて、ニューイの笑顔が好きだから。 「お前さんがゲームならなー……」 「なぬっ……!?」  脳死したまた呟くと、目の前のニューイがガビン! とショックを受けた。  九蔵は構わずもそもそと手を伸ばしてニューイの頬に触れ、それからスルリと指を滑らせ顎に添える。  ニューイは違う意味でガビン! と硬直する。夜勤明けバンザイ。 「こんなふうに触れなきゃ……俺の声なんか届かねぇから、恥ずかしいこと延々囁いて推しまくれんのに……」 「……ほ、ほぇ……」  おっと。  硬直したまま耳まで赤くなったぞ。  やはり可愛らしい。九蔵はふっと笑って、一昔前のヒロインのような声まであげて赤面するニューイの顎を親指でスリスリする。  あらら、今度は白くなった。  言わずもがな、ツノ有り骸骨姿に戻ってしまった悪魔様である。打たれ弱いな。 『いやだってこれはちょっと……キミの言葉を借りると、私にとって九蔵は会えるタイプの推しなので……!』 「ニューイさん語彙が現代っ子飛び越えてただのオタクになってませんかね」 『あと夜勤明けでくたびれた九蔵の色気にもう抱かれた気がするのだが?』 「俺さんは童貞のままですが?」 『九蔵、よく考えておくれ。九蔵は私を推しと言うが私は九蔵を推しているのだから、フェロモンで抱かれることも想像で孕むことも容易いことである。おたくの九蔵ならよくわかるだろう? 推しと同棲だぞ? さっきのセリフと状況をキミとキミの推しに変換して考えておくれよ』 「よーしちょっと俺の影響を受けすぎたみたいなんでお薬出しておきましょう!」 「赤面逆ギレ九蔵きゃわわ〜っ!」 「シャァラップ!」  ──なんでそこだけ人間体に戻るんだイケメンの無駄遣いきゃわがッ!  ガバッ! とベッドから起き上がってこれ以上の暴走を阻止する九蔵に、デレデレと破顔して悶えるニューイ。  また誰の差し金か浮遊にもほどがある語彙を仕込まれおって、言われたことをなんでも信じるんじゃない天然記念物悪魔め。

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