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「ンッ、ンッ、ンッ」  酸欠で視界がぼやける。  それでもキスはやめない。  我慢できているのか?  もうずっと気持ちいい。中でなら何度もイっている。出ていないなら奇跡だ。  体に力が入らないのに穴だけはギュウギュウ締めつけて、逆上せているのか興奮しているのかわからない。気持ちいい。  ごちゅ、ぐぢゅ、と粘着質な音を奏でて腹の中を異物がかき混ぜる快楽。  濡れた裸体を抱き合わせて、唇がくっついて、吸いあって、それで後ろは粘膜で繋がっている。  まるで肉の輪っかみたいに。  出たり入ったり吸ったり注いだり。  体液と欲望を循環させる。  たった二人で生きていけそうな感覚。 「ンンッ……──!」  だから、ドクッ、ドクッ、と脈動するたびに流れ込む熱を一滴残らず飲み干すと、指の隙間からドロドロと白が溢れて、二人の腹を汚すのだ。 「ン……ッ、ッ……ッ……ッ」  ゴクン、と嚥下する。  生ぬるいだけの溶液がひどく甘い。  萎れていく肉茎が汚れた手の間からヌルン……と抜け落ちて、残った手をどちらともなく繋ぎ合い、指を絡めて握った。  自分の出した精液まみれなのだがバスルームなんだから洗えばいい。あとのことなんか考えたくない。正気になると死ぬ。羞恥で。 「……は…ん……」 「ぅ……ん、ふ……」  唇を合わせて、あむあむと食む。  角度を変えて食べ合い、なるべく密着して、絶頂の余韻に浸る。  最後までじっと動かず深く注いでいた肉棒が、トク、トクン、と吐精を終えて、九蔵の中で大人しくなった。  薄っぺらい腹が心做しか重い気がした。悪魔は遅いし長いし多くて困る。 「……よし、ベッドへ行こう!」 「んぁ、ぉへあ」  そうぼんやりと考えていると、ニューイは挿れっぱなしで九蔵を抱き抱え、ザバッ! と湯船から立ち上がった。  なんだって? コノヤロウ。  キスをしながら性の欲望を残さずじゅるりと平げたくせにまだヤるのか。 「ゔひぇ……刺さってますよぉ……」 「ダメだ。なにかのスイッチが入ってしまった。止まらない。九蔵がえっち過ぎる。今日は夜まで舌が癒着するくらい舐って閉じなくなるくらい突いていたい気分なのだよ。バスルームでは押し倒せない……!」 「半日挿れっぱはおやめあそばせ……あと中に二回分はいってるから風呂場でいい……シーツ汚れるぅ……」  嘘だろデーモンとツッコミたい九蔵だが逆上せ気味な上にイッたばかりで動けず、デローンとニューイの肩にへばりつく。  結局ロマンスとは程遠いじゃないか。  自分だけのせいじゃないと思う。  ニューイは突拍子ないしねちっこいし絶倫で遅漏で快楽責め大好きマンで、王道の嫉妬やら調教やら見せつけやらで雪崩込むことはなく、AVは純愛系しか見なさそうなピヨピヨ男子なのだから、自分がツッコミを入れないと一生セリフが喘ぎ声オンリーだ。  ……いやまぁ、別にそれが嫌じゃないから照れ隠しするのだが。  でもロマンス云々は両成敗だぞ、と。  うーんと完全に身を任せてぐだる九蔵を、全く疲労の見えないニューイがぎゅうぎゅうと抱きしめる。  三回戦はやぶさかではないが、ここじゃダメなのか?  構造上出すとケツが締まるので、今動かれると困る。このままベッドに移動されると自重で突き刺さったモノが凶器になる。  九蔵がへろへろとそう言うと、逆上せても疲れてもいない艶ピカのニューイがなにか言おうとして、「むっ?」と声を上げた。  おい、今度はなんだ。  なんで眉をへにょーんとするんだ。 「九蔵、九蔵がここでいいならバスルームでも構わないと思ったのだが……」 「だがぁ……?」 「どうやら、窓が全開である」 「…………」  新手の完全犯罪か?  そう呟いた九蔵は〝自分は今羞恥心だけで人を殺せるかどうか実験されているんだ〟と割と真剣に疑いながら、無言でバスルームのドアを指さすのであった。

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