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第110話 ∥
(アランside)
ディラント様が淹れてくれたお茶は本当に美味しかった。
ディラント様をチラッと見ると、ディラント様は微笑んで俺を見る。
俺は途端に顔が熱くなって下を向いた。
「それで、話とは何ですか?」
落ち着いたところでディラント様がそう聞いてきた。
「確認がしたかったんです」
「確認?」
「私がディラント様の従者になる事、ディラント様はそれで本当に宜しいのですか?」
旦那様にディラント様付きにと言われた時、俺は嬉しかった。
でもディラント様は違うかもしれない。
そんな事を考えていると、ディラント様からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「それは俺の台詞ですね」
そう言って笑うディラント様に、俺は首を傾げた。
「アランさんは父様の従者です。そんな人が俺みたいな子供に仕えるなんて嫌じゃないですか?」
「そんな事ありません!私はディラント様にお仕え出来ること、とても嬉しく思います」
「……ありがとうございます。俺もアランさんが傍に居てくれたら心強いです」
そう言って笑うディラント様に目を奪われた。
「アランさん、ラジールの事大変だとは思いますけど、宜しくお願いします」
そう言ってディラント様が俺に軽く頭を下げた。
ラジールの為に俺に頭を下げるなんて……
ディラント様はラジールの事を特別に思っているんだろうか。
そう思うと、何かモヤモヤとした。
「……アラン」
「え?」
「私の事、アランと呼んでくれませんか?」
ずっと気になっていた。
ディラント様はラジールの事を呼び捨てにするのに、俺はいつまでたってもアラン"さん"のままだ。
そんな事を考えながらディラント様を見ていると、ディラント様が笑う。
「分かりました、アラン」
『アラン』
ただ名前を呼ばれただけなのに、自分の名前が特別なように感じた。
「俺からも一つ良いですか?」
そう言われて、俺は首を傾げる。
「本当は俺、堅苦しいのは苦手なんです。ですからこれからは、素で接して貰えませんか?」
「む、無理です。そんな……」
「……駄目ですか?」
そう言われて言葉に詰まってしまう。
「俺はアランともっと仲良くなりたいんです。でも畏まられると、距離を感じてしまって……」
ディラント様はそう言ってすがるような目で見てくる。
そんな事言われたら何も言えなくなる。
そう思って、俺はため息をついた。
「分かりました。出来るだけ善処します」
そう言うと、ディラント様は嬉しそうに笑った。
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