110 / 226

第109話 ∥

伯爵様たちとの話し合いは終わり、俺は部屋まで戻ってきていた。 ベッドに寝転がるとルオが喉を鳴らしてすり寄ってきた。 俺はすり寄ってきたルオを撫でる。 フワフワとした仔猫特有の毛並みに癒される。 「今日は構ってあげられなくてごめんね」 ルオに向けてそう言うと、ルオが答えるように鳴いた。 ルオの温かさと疲れから、睡魔が襲ってくる。 ウトウトしていると、扉がノックされる音で覚醒した。 「は、はい」 俺はノック音に慌てて返事をした。 『……アランです。お休みのところ申し訳ありません』 「アランさん?」 俺はベッドから降りて扉を開ける。 扉を開けると、アランが少し俯き気味に立っていた。 「こんな時間に申し訳ありません」 そう言ってアランが頭を下げる。 「大丈夫ですよ。それより何かありましたか?」 「……少し、お話がしたくて」 そう言うアランはどこか思い詰めた顔をしていた。 「…入って下さい」 俺は扉を開けてアランを部屋の中に招き入れた。 アランを椅子に座るように指示を出す。 俺はお茶を淹れようとティーセットが準備されてるところに向かった。 アランが淹れると言ったけど、俺がそれを許さなかった。 チラッとアランを見ると、俺にお茶を淹れさせるのが申し訳ないと思ってるのか、チラチラとこっちの様子を伺いながらソワソワとしていた。 俺はアランの様子を見つつ、お茶を淹れた。 お茶はいつもはリーナさんが淹れてくれるけど、たまに自分でも淹れることがある。 最初はキッチンまで行ってたけど、その事を知ったリーナさんがティーセットを部屋に置いてくれた。 俺はまずお湯が沸かせる魔道具でお湯を沸かした。 これは魔力で熱を発してお湯を沸かす物。 ケトルみたいなものだ。 他にも便利な魔道具が色々常備されていた。 お茶の入ったポットと茶菓子をトレイに乗せてアランの元に戻ると、アランが慌てて立ち上がった。 「ディラント様に用意させてしまって申し訳ありません」 「謝らなくて大丈夫ですよ。これは俺が好きでやってることですから」 そう言って用意したカップに淹れたお茶を注ごうとすると、そこでもアランが『私が』と言ってきた。 お茶の入ったカップをアランの前に置くと、アランは申し訳なさそうにしてきた。 「前にお茶を淹れるのが得意と言いましたよね。今回は正真正銘、俺が淹れたお茶ですよ」 そう言って『飲んでみてください』と笑顔を向けると、アランは遠慮がちにお茶を口に運んだ。 「……おいしい」 お茶の一口飲んだアランがそう言ってホッと息を吐く。 さっきまで強張ってた表情も少し和らいでいた。

ともだちにシェアしよう!