113 / 226
第111話 二人の従者
ラジールが邸に来て数ヶ月が経った。
ラジールは元々要領が良く、理解力もあるためアランが出した課題を驚異のスピードでクリアしていった。
ただ問題があるとしたら……
「ディラント様!」
俺を見つけたラジールが駆け寄ってきて抱き付いてきた。
アランの教育のかいあって、ラジールの言葉使いも所作も整ってきていた。
ただ俺を見付ける度に抱き付いてくるのはなかなか治らなかった。
あの後、身辺調査でラジールの歳が19だと分かった。
……19歳でこの行動って。
そう思うと、ため息が出た。
「こら!ディラント様に抱き付くなと何度言えば分かる!」
ラジールが後ろから来たアランに引き離される。
アランも俺が素で接して欲しいと頼んで、アランの努力もあって大分砕けた感じになった。
「ディラント様すいません、こいつには何度も言ってるんですが……」
アランがラジールの首根っこを掴みながら頭を下げる。
「大丈夫ですよ。ラジールに抱き付かれるのはもう慣れました」
「ほら、ディラント様もこう言ってるじゃん!」
そう言うラジールにアランが睨み付けてた。
まだまだラジールの教育には時間が掛かりそうだな。
二人のやり取りを見ていて、そう思って思わず苦笑を漏らした。
「そうだ、ディラント様。旦那様が呼んでましたよ」
アランが思い出したように言う。
「父様が?」
なんだろうと思いつつ、俺はアランとラジールと一緒に伯爵様の元に向かった。
ともだちにシェアしよう!