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第232話 ∥

(リオネスside) 「……遊びって聞いていたけど、あんなに激しいものなのか」 体調が回復したディラントはルオと遊ぶ為に外に出た。 遊ぶと言っていたから、ほんのじゃれ合いなのだろうと思っていた。 でも、今目の前で繰り広げられているのは、到底遊びとは言えなかった。 ディラントとルオが一定の距離を取ってしばらく、合図があるわけでもなくルオがディラント目掛けて飛びかかった。 かなりのスピードで飛び掛かるルオに、普通なら一溜りもないだろう。 でもディラントは余裕でルオを避ける。 避けるだけではなく、攻撃まで仕掛ける。 ルオもしなやかな動きでディラントの攻撃を避けていた。 「ディーとルオにとってはいつもの事ですわ」 とシャロウネ嬢が呆れ気味に言う。 僕はもう一度ディラントたちに視線を向けた。 目の前で繰り広げられているのは明らかに『戦闘』なのだけど、ディラントは笑顔だ。 ディラントとルオにとっては、この『戦闘』がスキンシップなのだろう。 ……楽しそうだな、後で僕も…… 「まさか交ざろうなんて考えていないですよね?」 後ろからそう声がして思わず体が揺れた。 見ると、ロンドが冷めた視線を向けていた。 「"殿下"、あれに交ざろうなんて考えていないですよね?」 ロンドが再度聞いてくる。 ロンドが僕の事を『殿下』と呼ぶのは、立場を考えろということだろう。 「…………考えてない」 そう答えると、ロンドから大きなため息が聞こえてきた。 「あれはディラントにしか出来ない芸当だ。下手にリオが加われば、リオが怪我をする」 ロンドは『それにしても』と続ける。 「ディラントがあそこまで強いとは……」 普段のディラントからは想像がつかないのだろう。 前にアランとラジールとの手合いを見たことがあるけど、あそこまででは無かった。 「ディラントは強いぞ?」 後ろから突然声が聞こえて、見るとオルトがニカッと笑う。 「そんなに強いのか?」 オルトが強いと認めるなら相当なんだろう。 「ディラントには騎士科の生徒は勿論、講師ですら勝てない」 オルトの話では、ディラントは剣は扱えないものの、体術での体の動かし方が上手いらしく、生徒は愚か講師ですらディラントからの指導を求める声が出ている程らしい。 「……そんなにか」 「ディラントは凄いぞ」 そう言ってオルトはディラントに視線を向ける。 オルトのディラントを見る瞳に、一瞬胸がザワついた。 「終わったみたいですわ」 シャロウネ嬢の言葉にハッと我に返る。 見るとディラントがルオに担がれていて、メイドたちが慌てて駆け寄っていくところだった。 「……なぜそうなるんだ?」 僕はルオの背に背負われて戻ってきたディラントに声を掛ける。 「……すいません。行けると思ったんです」 そう言ってディラントは申し訳なさそうにする。  ディラントは体力切れで動けなくなっていた。 周りを見てみると、慌ててるのは王宮の従者やメイドだけでグロウ家の従者たちは慌てる様子がない。 多分いつもの事なのだろう。 「まったく、ディーにはそろそろ自分の体力を把握してもらわなくては困りますわ」 「すいません」 怒るシャロウネ嬢に、ディラントがペコペコと頭を下げている。 その様子をみて、思わず苦笑が漏れた。

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