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媚薬を盛られた青年主人を慰めるつもりが、逆に慰められる従者のお話(2/3)
「ロ、ロッソ!?」
いつも表情すらほとんど崩さない従者の、初めて見せる涙に、勇者は狼狽えた。
そしてロッソ自身も、自分の涙を指で掬い、わずかに驚いたような顔をしていた。
今までも、前の勇者に嬲られ、涙を漏らす事はあった。
しかし、感情の昂りから涙を零したのは、一体いつが最後だったのか。
ロッソにはもう思い出せないほど遠い過去の事だった。
一度溢れ出した涙は、止まりそうになかった。
ロッソは止めどなく零れるそれを拭うことを諦めて、もう一度リンデルを見る。
心配そうに、宥めるように、こちらを見つめる金色の瞳と、それとはおおよそ不釣り合いに、未だそそり立ったままの物。
それに、ロッソは焦がれた。どうしようもなく、これに貫かれたいと願ってしまう。
「私が……したいと言ったら、勇者様はしてくださるのですか?」
涙を零して縋るように見つめるその眼には、間違いなく懇願が滲んでいる。
「え……と……」
あからさまに動揺するリンデルのそれを、指先で愛し気に撫でながら、ロッソが追い討ちをかける。
「私にとって、一番大切なのは、間違いなくあなたです」
「いや、それは、大切の意味が違……」
じわり、と逃げようとするリンデルの腕を、ロッソはぐいと掴んで引き寄せる。
「何も違いませんよ?」
涙を零しながらも、ロッソは妖艶に微笑んだ。
「私にとって、あなた以上に大切なものなどありませんから」
「……っ」
にじり寄るように口元へ迫るロッソに、リンデルは思わず顔を背ける。
腕を頭上に抑え込まれ、身動きできないままに伏せられた震える金色の睫毛に、ロッソはそっと口付けると、解きかけていた紐に手をかけ、自らの下着までを手早く取り払う。
返事など、もう待つつもりもなかった。
たとえ答えが求めるそれでなくても構わない。
この方のお役に立つ事が、私の全てだ。
「ロッソ、待っ……ぅ。あっ。あああっ」
制止を聞かず、ロッソは勇者のそれを自らへと突き立てる。
堪えきれない声がリンデルから溢れるのを聞いて、ロッソは自身の暗い感情が満たされるのを感じる。
「あっ、ロッ……ふ、く。ぁぁっ」
やめてくれと乞うような瞳に、気付かないフリをして、ロッソは腰を揺らす。
「ぅ……んっ……」
声を漏らしたくないのか、必死で唇を噛むリンデルの唇を、ロッソの指が撫でた。
「いけません勇者様、傷ができてしまいますよ」
「あ……」
僅かに開いた口の中へ指を差し込まれ、リンデルがそれを噛んでしまわぬよう口を開く。
それを見定めて、ロッソはリンデルの胸に身を寄せると大きく腰を振った。
「は……ぁ。あ……ああっ」
無理矢理開かされた口から溢れる声に、ロッソは欲情する。
「もっと……私だけにあなたの声を聞かせてください」
「ら、め……あ。っあああああっ!!」
ビクビクと体を大きく痙攣させて、一瞬硬直するリンデル。
中に出したくないのだろう。腰を引こうとする彼を、ロッソが力尽くで抑え込む。
体内に広がる熱にうっとりと目を細めるロッソ。
それとは対照的に、リンデルは哀しげに涙を一粒零した。
頬を伝う雫を、ロッソがぺろりと舐め取る。
そのまま、首筋に舌を這わせると、リンデルがまたびくりと腰を浮かせた。
「まだ、足りないようですね?」
ニヤリと口角を上げて囁くロッソの言葉通り、リンデルのそれは、ロッソの中でまた立ち上がる。
ぐったりと力なく横たわるリンデルの腕を放し、その口から指を抜くと、リンデルは涙混じりの声で助けを求めた。
「も……苦し……ぃ」
ロッソはその声を聞きながら、ゆるゆると腰を揺らす。
「お腹の、下のとこが……ずっと、熱くて……」
いつの間にか泣き止んだロッソと入れ替わるように、リンデルは苦しげに涙を滲ませていた。
「こちらですか?」
くい、と三本揃えた指の腹でリンデルの下腹部を押さえると、青年は目を見開いて鳴いた。
「あっあああっんぁあああっ!!」
背も腰もびくりと浮き上がり、ロッソの中に熱いものがじわりと滲む。
予想以上の反応にロッソは内心驚くも、それはすぐに笑みへと変わった。
「まだ、外から押さえただけですよ?」
「っ、ぅ……」
荒い息にぐっしょりと濡れた青年の後ろへと指を這わせる。
そこは、表から流れ込む液体で既にぬるりと濡れていて、スムーズにロッソの指を受け入れた。
「あっ」
ビクッとリンデルが体を逸らす。
二本、三本と差し入れれば、それだけで青年は声を上げ達してしまった。
ロッソの知る限り、男性経験の無いはずの青年が、何故こんな体をしているのか。
頭に過ぎったのは、今までの全ての勇者で出自から徹底的に洗われているはずの調書に、彼にだけ空白がある事だった。
普通は本人が隠すような過去だって、現地で聞き取りをすれば埋まる。
それが、彼の場合は埋まらなかった。
彼を捕らえていた窃盗団の者達は、死んだか逃げた者しかおらず、話を聞けるものを見つけることはできなかった。
選考会議では、それを原因にリンデルを勇者にふさわしくないと主張した者も居たが、ことリンデルに関しては騎士団長の押しが強く、強引に会議を通したと聞いていた。
「ロッ、ソ……」
切なげな甘い声。
ハッと顔を上げると、リンデルがほてった頬をして、じっとロッソを見つめていた。
その縋るような、ねだるような瞳に、ロッソはぞくりと背筋に熱が上るのを感じる。
動きを止めていた指を動かし始めると、リンデルからは堪えきれない嬌声が溢れた。
「あっ、あっ、あっん、んんっ、ああんっ、ん、あああっ」
可愛らしい声に浮かされるように、ロッソのそれが立ち上がる。
後ろ手では奥まで届かないが、背を向けるのは惜しい気がして、ロッソが仕方なしに自身に入れていた物を抜いた。
「ぅ。あ……っ」
はぁはぁと肩で息をするリンデルの表情を見上げなから、指をさらに深くへと挿し入れる。
「あ、は、んあああっ」
受け止め切れない快感を逃すかのように、リンデルが大きく首を逸らして叫ぶ。
震える両手は、ぎゅっとシーツを掴んでいた。
もう恥じらうほどの余裕もないのか、高い声で切なげに鳴くその青年の奥へ奥へと指を侵入させる。
既にあれほど繰り返したにも関わらず、青年はそう間を置く事なく達した。
リンデルのそれからは、もう出すものが残っていないのか、ほんのとろりとふた雫ほどの液体が漏れただけだった。
「……そろそろ落ち着いてきたでしょうか?」
ロッソが、自身の冷静な声に内心嫌気を感じつつ問う。
「はぁ……ぁ……ロッソ……」
熱に浮かされたような、焦点の僅かに合わない蕩けそうな顔で、リンデルは自身を見下ろす従者へと手を伸ばした。
「勇者、様……?」
ロッソがその手を取るべきかとほんの一瞬悩む間に、その手はするりと下されロッソの物へと触れる。
「これ……入れて、ほし……い」
熱い吐息と共に、甘くねだられて、ロッソが思考停止する。
ギシリと固まってしまった従者の物を、震える指先でそっとなぞりながら、勇者が懇願する。
「ロッソの……が……欲しい……」
「わ、わ、私が、勇者様に……ですか?」
ロッソの上擦った声。
明らかに動揺しているが、求められた事が嬉しかったのか、その頬は紅潮していた。
入れられる事は練習済みでも、勇者に入れるなど想定していなかったのか、求めに応じて良いものか思案しているようだ。
躊躇うロッソに図らずも焦らされて、リンデルが未だ熱く脈打つ熱に身を捩る。
「……っ俺に、入れて……、ロッソ、お願……っ」
リンデルは喘ぐように涙を零すと、ロッソの長い髪を掬い上げ、それに縋る様に抱きついた。
勇者の苦しげな声に、ロッソがハッと我に返る。
目の前の青年は、まだ薬に体の制御を奪われて、止まぬ熱に苦しめられている。
「私などで、よろしければ……」
ロッソは意を決すると、リンデルの足を持ち上げる。
リンデルは、願いを聞き入れてもらえた事にホッと表情を緩める。
これできっと楽になれる、そう思ったのかも知れない。
既に数多の液体でどろどろの状態のまま、ひくひくと期待に蠢くそこへ、ロッソの熱い物があてがわれる。
リンデルに分かったのは、そこまでだった。
次の瞬間には、快感に全ての思考を奪われる。
ずぶずぶと割り入るその感覚だけで、全てが溶けそうに熱くて、言葉にならない声が止まない。
足を上げられ、最奥まで侵入を許せば、それだけでリンデルは目の前が真っ白になった。
「あっはっ、あああっあああああああんんんああああんんっっ!!」
ビクビクと全身を痙攣させて、大きく体を仰け反らせる。
「くっ……」
ロッソが小さく呻く。温かく柔らかなそこへ迎え入れられ、全てを包み込まれた後に、ぎゅうぎゅうと優しく絞り込まれて、今まで感じた事のない快感を与えられる。
いけない、このままでは……。とロッソが焦り、それを抜こうとする。
今度はリンデルがそれに縋り付いた。
「あっ、行かな……で、俺、を……ひとりに、しな……い、で……」
ぼろぼろと涙をこぼして手を伸ばすその人が、自分を見ていない事にロッソが気付く。
しかし、極限まで高まった熱はもう止められなかった。
どくりと脈打ち一際大きくなったそれに、自分のさらに向こう側を見つめるリンデルの金色の瞳孔が収縮するのをロッソは目にする。
「……ぁ……」
その瞳孔が、じわりと緩んで今度は最大まで開く。
「ぅぁああっあっああっあああああっっ!!」
先ほどよりも強烈に締め付けてくるそれに、ロッソは自身の全てを搾り取られるような感覚を覚える。
「勇者、様……っ」
思わずこぼしたロッソの言葉に、リンデルはふわりと花のように微笑む。
「あ、は……っ、あったかい、よ、ナカに、いっぱい……」
溢れる涙が伝う喉を、ごくりと鳴らして、リンデルが息を継ぐ。
「もっと……もっと、俺の、ナカ、いっぱいに……して……」
甘くねだるリンデルが、指に絡めたロッソの黒髪へ愛し気に口付ける。
引き抜こうかと思ったそれを、さらに求められ、ロッソは黙って腰を揺らした。
「ん、あ……、は、ぁ……っ」
まだそこまでの硬さは戻っていなかったが、それでもとろとろに蕩けた肉壁は、柔らかにそれを包み込む。
びくびくと時折小さく痙攣するその長い指で、リンデルは黒髪を何度も唇に押し当てる。
その行為に、溢れそうな程の愛を感じて、ロッソが心乱される。
彼が見ているのは自分ではないと、頭ではわかっている。
それでも、自分に犯され悦びを露わにするその姿に、彼は私のことが好きなのではないかと、思い違いをしてしまいそうだった。
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