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第1話

俺、西城八尋(さいじょうやす)は頭が悪い、それは自覚していた。 しかしこのテストの点数。 数学15点は流石にまずい。 先生にも追試を言い渡され、それに通らなければ後がない。 こうなったらクラスの委員長もしている、皆の頼れる男に頼るしかない。 優等生の名前は黒雪拓斗(くろゆきたくと) しかし、ひとつ気になる噂がある。 その優等生はホモらしいのだ。 その黒雪の口癖が「お尻触らせてくれたら良いよ」らしい。 ここは男子高。 大体の奴は「冗談やめろよ」と笑い上手くかわしていた。 きっと俺が頼んでもうまくかわせるはず。 放課後、黒雪が下駄箱にいるところへ声をかけた。 「黒雪、頼みがあるんだけど」 そう切り出すと黒雪は驚いたのか目を見開いた。 「なに?」 驚いたのもつかの間、平常の表情に戻り聞いてきた。 なぜこんなに驚いたのか気になるが、それは置いておこう 「勉強を教えてほしいんだ、俺追試になっちゃって、困ってて」 「セックスさせてくれたらいいよ」 その答えは想定外の物だった。 「は?何、言ってんの?」 お尻を触らせ欲しいといわれるかと思ったらセックス? 尻くらいなら差し出してもよかったが、これは中までってことか? 「その反応だと交渉決裂かな?」 と黒雪は笑って持っていた靴を置いて履いた。 「あ、いや、待って」 「その気があるなら来て」 と黒雪は歩き出した。 こちらに何も言わせる気は無い様だった。 セックスはしたいが、それは女の子限定。 男同士でなんて考えていなかった。 最近そういう話はよく聞くが、自分がやるなんて……。 でも、教えてもらわないと追試がやばい。 落ちて留年にでもなったらさすがにまずい。 普段のお尻を触るだって、みんな断って冗談としてかわしてる。 今回も断れば実際にされることはないはず。 頭もよくてそんな冗談も言える男、それが優等生という立場を保持できてる理由だった。 しぶしぶついていくと、マンションの前に着いた。 「ここ」と黒雪は入っていく。 インターホンを押すと入り口の自動ドアが開いた。 高級そうなマンションだ。 エレベーターで15階まで上がり一室の前でインターホンを押す。すると中から男が出てきた。 「ん?友達?」 「いや、勉強を教えてほしいんだって」 拓斗と男は簡単な会話をして中に入っていく。 「お父さん?」 こっそり顔を近づけ聞く。 「違うよ、セフレ兼家庭教師」 拓斗はにやりと笑い靴を脱いで入っていった。 唖然として10秒ほど立ち尽くしてしまった。 奥の部屋に入ると、黒雪は男に近づき首を抱き寄せキスを交わした。 ねちょっとした音が聞こえ、舌を絡ませているのがわかる。 ゾワッとして後ずさるが、黒雪はそれに気づき振り返った。 「ごめん、いつもの癖で」 拓人はいつもの事と言った様子で笑顔を見せた。 「あの、俺…」 逃げたい、それが正直な気持ちだった。 まさか本当にされるのか? 俺まだ童貞なんだけど!? 処女を先に奪われるのか!? いや、そもそもその場合、俺は受け身側なのか? 頭の中でもんもんもやもやしていると 「勉強部屋借りるよ」 黒雪は男に言って手招きした。 男はのんきにソファでスマホを見ていた。 特に害はなさそうだ。 勉強は教えて欲しい。 しないといけない。 さっき下駄箱で言われた条件を忘れて、勉強部屋へと入ってしまった。

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