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(1: 6) ~了~
一度の性交が終わった後、冬総は上機嫌で秋在を抱き締めていた。
「秋在、大好きだぞ。秋在が俺のことを『嫌い』って言っても、俺は秋在のことが大好きだからな。絶対に離さないぞ、秋在」
「フユフサ、うるさい」
「好きだよ、秋在」
「囁き声でもうるさい」
秋在はどこかご機嫌が斜めだが、それでも冬総は幸せそうに笑う。
自慰行為を迫られた時はどうしたものかと思ったが、結果的には冬総の望むこととなった。
それが嬉しくて、冬総はにやけ面を隠すことができない。
「ヤッパリ俺の秋在は世界一可愛いな。ツンツンしてても大好きだし、苗字呼びの秋在も逆にレアで好きだぞ」
「ボクは苗字呼び、ちょっと寂しい」
「そ、そっか。じゃあ、もう呼ばないようにする」
膝の上に乗った秋在の背中を撫でながら、冬総はシュンとする。
そうすると、秋在がそっと顔を上げた。
「あの頃は、黒髪だったね」
「ン? あぁ、そうだな。ピアスも開けてなかったっけ」
「もう黒にしないの?」
「ン~……? 秋在が『黒がいい』って言ったら、戻すかも」
そう言いながら、冬総は秋在の黒髪を撫でる。
「でも、黒にしたら秋在とお揃いか。それも捨てがたいな」
「ボクが金髪にする?」
「それは断固として拒否する。秋在の可愛い髪が痛む」
「自分は染めたくせに」
手を伸ばし、秋在は冬総の耳たぶをつつく。
「ピアスも、勝手にした」
「先手を打つが、ピアスなんてもっと駄目だからな。秋在の体に傷が付くとか、俺には耐えられない」
「全部そっちが先にしたのに」
「俺はいいんだよ」
へらりと、冬総は笑みを浮かべた。
「秋在、今の俺を見て『カッコいい』って言ってくれたからな。それに、これは【変わりたくて選んだ道】だから。秋在が、俺を肯定してくれた証拠みたいなモンだからさ」
屁理屈じみたことを言っている自覚は、ある。
それでも、冬総は今の自分を好きになれた。
そのきっかけとなった髪も耳も、今は変えるつもりがない。
……秋在に頼まれたら、話は別だが。
「そうだ。秋在、あと一個のお願いは決まってるのか?」
冬総からの問いに、秋在は首を横に振る。
「まだだよ。ずっと、まだ」
「そっか。じゃあ、思いついたら言ってくれ」
「貸しが増えたら言う」
「一個はずっとストックしておくってことか……!」
それはそれで怖いような、複雑な気分だった。
秋在は冬総の首筋に顔を埋めて、モゴモゴとくぐもった声を漏らす。
「――返すまで、離れられないでしょ」
聞き取りづらくて。
だけど、ハッキリと聞こえてしまった言葉。
顔を埋めたままの秋在を見て、冬総は思わず破顔する。
「俺は秋在に嫌われたって、離すつもりがないのにか?」
「ん」
「要らない心配なのになァ……」
秋在の背を、冬総はポンと撫でた。
「俺はお願いのストックなんてなくても、秋在からのお願いはなんでも聞くけどな」
「お願いし甲斐がないね」
「そうきたか……」
冬総が小さくショックを受けている中。
――秋在は終始、冬総の首筋に笑顔を埋めていた。
当然、冬総はそのことを知らない。
【突発的ニックネーム】 了
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